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Vol.Ⅱ【3】
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『一昨日のジムで、お会いしましたよね?』
『はい…やっぱりそうですよね。
びっくりしました…。』
『ココ、俺の店なんですよ。』
『えっ?
そうなんですか。』
『今日は珍しく遅番で、
いつもは相棒がこの時間に居るんです。』
『あぁ…なるほど。
いつも閉店ギリギリの時間に出しに来てたんですけど、
今夜はたまたま早く来れたから…。』
はにかむような笑みを溢して、
右手に下げていた大きな紙袋を何故か後ろに隠す姿は、
一昨日に一緒にエアロバイクを漕いでいた時には気付かなかったけど、
華奢で色白でとても繊細そうで。
見た感じだと、
俺より歳下だろうな。
俺と真逆のタイプなのは間違いない。
『俺、藤谷シノブって言います。
名前、伝えてなかったですよね。』
『はい。
僕は…渡邊です。』
『改めて宜しくです。
あ、じゃ、早速お預かりしますね。』
そう言って紙袋の方へ手を伸ばしてみせると、
下唇を噛みながら渋々な様子でカウンターに乗せた。
何か都合の悪いモノでも入っているのかな?
頭を過ったけど、
あくまでお客様のプライバシーだからと、
無心のフリをして品物をカウンターに広げていく。
『Yシャツが5枚と、
スーツジャケットが1枚に、
トラウザーが2本ですね。』
『トラウザー、って?』
『スーツのパンツのことです。
すみませんっ、専門用語が出ちゃいました。』
『いいえ…なんか、新鮮で面白いです。』
『ははっ、それは良かった!
えっと、特に落としたい汚れとかはありますか?』
問い掛けた途端に視線を右下に落とすから、
聞いちゃいけないことを聞いてしまったのかと焦ってしまう。
しかし、
この人はどうしてこんなにも儚げなんだろう?
少しの衝撃で割れて粉々になりそうな、
ガラス細工に見えてくる。
『こっちのトラウザーに、
シミがあるので…お願いします。』
『解りました。
あー、ココですね。』
え…?
見つけたはいいけど、
そのシミの種類と位置に一瞬手が止まってしまった。
それを悟られちゃいけないと、
直ぐ様ランドリーバックに詰め込んで、
料金と会員カードを預かる。
【渡邊アユム】様、か。
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