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「ふふ…そうだった。すっかり忘れてたぜ」
つま先を必死に伸ばしている姿を見て小さく笑った大男は、俺の頬を両手で包み込むと盃に注がれた酒を飲むかのように優しく俺の唇に口をつけた。
何度味わっても飽きることのない媚薬のような口溶けは、俺の寂しくなっていた心をほんの少し和らげた。
俺を飲み干した光祐は、優しく俺の額に手のひらを乗せた。
そのままゆっくり頭を撫で始めると「いってくるな」と呟くような声で言い扉を開いた。
彼が出ていくと、バタンと言う音だけが虚しくに玄関に響くのであった。
今日はやたらと針の旋律が気になってしまう。
リビングで唄っている壁掛け時計の音色が俺の心をより一層寂しくさせた。
クッションを抱き締めたままソファーで横になっていた俺は、特に何かをするわけでもなくただただ部屋を眺めていた。
光祐が帰ってくるまで読みかけの漫画でも読もうかとも思ったが、気が進まずやめにした。
なんだろう?今日はやけに人肌恋しい。
一人で留守番なんて…初めてじゃないのに。
クッションを抱き締めている手に、グッと力を込める。
だが自分の胸元に届いた感触は求めているものとは違っていて、その無機質な柔らかさがさらに俺の不満を煽った。
光祐にしかないあの感触を、熱を、吐息を、ただひたすらに求めて顔をクッションに埋める。
俺の欲求は深まるばかりだ。
「光…祐…」
思わず零れた言葉に返事が返ってくることはなく、規則正しく刻みゆく針の音だけが俺を慰めるのであった。
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