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心を救ってくれた
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サクの胸でようやく落ち着いた僕は、サクを家の中に入れた。
サクは、おばあちゃんにお線香をあげてくれた。
お母さんは家にいなかったから、サクと僕の2人きりだ。
深い悲しみで薄れてしまっていたけど、2人きりになった事で、サクに好きって言われた事を思い出してしまって、急激に恥ずかしくなってきた。
「葵、辛かったな。」
線香をあげてくれたサクは、僕の方に向き直って言ってくれた。
「うん…。悲しくて悲しくて、何も手につかなかった。僕が学校からもっと早く帰ってくればとか、沢山後悔もした。学校やバイトも行く気になれなくて…。ごめんね、ずっとバイト休んじゃって。」
「いや、そんなの全然謝ることじゃないよ。碧さん、凄く素敵な人だったよな。聞いた時、俺もめちゃくちゃ悲しかった。」
「うん。ありがとうね。サクが来てくれたお陰で少し元気が出たよ。」
「本当か?よかった。」
会話が途切れると、妙に意識してしまった。
多分、サクも同じ気がした。
「あのさ、こんな事があった後だから、誘おうか迷ったんだけど…。」
そう言うと、サクは何かのチケットのようなものを手渡してくれた。
「これは?」
「俺らのライブのチケット。」
「え、サク、ライブするの?」
「うん。バンドやってるって話は前したよね?たまにライブハウスでライブやったりするんだ。今回のは前座だから1曲しかやらないけど、家に閉じ篭ってるよりはいい気晴らしになるかなって思ったんだけど、どうかな?」
僕は少し考えたけど、行こうと思った。
サクの言う通り気晴らしになるし、何よりサクが唄っている姿を見てみたいと思った。
「ありがとう。行きたい。」
「よかった!じゃあ明日、17時に待ち合わせしよう。終わったら一緒に帰ろうぜ。」
「うん、ありがとう。」
「こちらこそだよ。1曲しかやらないのにわざわざ来てもらうんだから。」
はは、とサクは笑った。
サク、僕が「ありがとう」って言ったのは、ライブに誘ってくれた事に対してじゃないよ。
いつも、僕の事を助けてくれること。
僕の心を救ってくれること。
僕を笑顔にしてくれること。
その全てに対しての「ありがとう」って言ったんだよ。
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