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αの男
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『パパパパーーッ、パ、パ、パ』
耳を突き抜けるトロンボーンの音
続くようにドン、ドンと太鼓の音が一定のリズムを刻む
吹奏楽部の華やかな演奏に迎えられ、真新しい制服に身を包んだ新入生たちが体育館から流れるように現れた
まだ幼さの残る面々が少しの緊張と大きな期待に目を輝かせている
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陸「...」
人、人、人。
4月、成北(なりきた)高校入学式
式後の体育館前は新入生やその家族、部活動の勧誘に奮闘する2、3年生でごった返し、まさにお祭り騒ぎだ
「サッカー部入りませんかー!」
「バレー部入らない?部員全員仲良くやってるよ!」
「柔道部!心と体を鍛えましょう!」
去年はこの人混みに耐えられなくてすぐに帰ったっけ
自分が入学した日のことを思い出しながら、パネル片手に人々の隙間を縫うように歩く
陸「バスケ部、どうすかー」
樹「おい陸!もっと元気にやれよ」
陸「やってるよ」
樹「嘘つけ。やる気が感じられん」
陸「うるせーなー...」
じゃんけんに負け、無理矢理勧誘係を押し付けられて渋々請け負った2年生の高橋陸は、同じく部活動の勧誘に励む友人、本堂樹からの喝を聞き流しながら、時間が過ぎるのをただ待っていた
陸「こんなん、わざわざ勧誘しなくても入る奴は入るんだしさあ......いてっ」
ブツブツ文句を垂れながら歩いていると、硬い何かにぶつかった
陸「あ、すんません...」
反射的に謝罪を口にして顔を上げると、日を遮るほどの大きな男が立っていた
身長176cmの俺の顔に影が落ちる
陸「(でか...)」
男は少し驚いた顔をしたが、すぐに凛とした表情をこちらに向けた
「…こちらこそ、すみません」
キリッとした太い眉に、短く整えられた清潔感のある髪の毛
真っ黒な瞳が何とも近寄り難い独特な空気を放っている
シワ一つない制服、新入生のようだ
陸「え、と......バスケ部、どう?」
「…柔道部入るんで」
陸「あ、そ」
男はバスケ部と書かれたパネルに一瞬目をやったが、さほど興味も無さそうにサラリと断った
190cmは優に達しているように見える高身長、高校生とは思えないような造り上げられた立派な体つき
どこまでストイックにトレーニングすればこんな体格になるのやら
バスケ部に連れていけば顧問が大喜びしただろう
男は視線を俺から外すとそばにあるクラス表に目をやった
これ以上話すこともないので、俺はパネルを持ち直し、くるりと向きを変えて相変わらず気乗りしない声で勧誘を再開したのだった
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