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αの男
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「ナイッシュー!」
放課後、体育館
床がボールを弾く音、床とシューズが擦れる音が響いている
床にボールをつく度に足元から振動が伝わる
その日バスケ部では試合形式での練習が行われていた
「陸、たのむ!」
陸「おう!」
パシッとボールを受け取ると、全身で立ちはだかる相手を1人、2人と抜いていく
この、抜き去る瞬間が堪らなく気分を高揚させた
「陸ー!いったれ!」
陸「まぁまかせとけって...」
仲間の声援を背中に浴びながら、キュ、キュ、とリズム良く踏み切る
空中でぐっと押し出したボールは、鮮やかな弧を描いてゴールへ吸い込まれていった
陸「っしゃー!」
樹「陸ぅ〜〜でかした!」
直後、ホイッスルが甲高く鳴り響くのと同時に、俺の元へ駆け寄りワシャワシャと髪の毛を乱してくる樹
樹とは小学校からの幼馴染みであり、親友だ
樹「さーすが、抜く時は抜いて決める時は決める。βの中のβだなお前は」
陸「んだよそれ、バカにしてんのか」
純平「おい陸!今のシュート良かった!サイコー!」
俺と樹の間に割り込んで肩を叩くのは谷口純平だ
身長180cmを超える大きな図体のわりに、性格はまるで犬のように懐こくて、どんな状況においても愛される存在である
俺、樹、純平の三人は同じ部活の仲間であり、クラスメイトでもあった
純平「次も頼りにしてるからな!」
陸「おー、任せとけ」
各々水分補給やストレッチなど適度な休憩をとっているうちにゲーム再開の時間を迎え、再びボールが回り始めた
相手の選手を繋ぐように鮮やかにパスが回され、徐々に熱気がコートを覆う
そんな時
『一本!!』
一瞬、時が止まったように
1人の男に目を奪われた
体育館を二つに仕切るネットの向こう
マットの上で、一人の男を軽々と投げ飛ばした大男
真っ白な柔道着
あの男...
樹「陸!危ない!!」
陸「え?」
ふと我に返り声の方を振り向くと、何かが視界を遮り一瞬にして目の前が真っ暗になった
「「陸!!」」
ジクジクと鈍い痛みが徐々に感覚として湧き上がる
ボールが顔面に当たったのだと理解するのに数秒かかった
陸「ってぇぇ.........」
純平「うわっ血っ出てる!」
陸「まじかよ...クソ痛...」
鼻を押さえている手に血が伝うのがわかる
ゲームは一時中断し、周りには部員達が心配そうに集まってきた
純平「鼻血か!?上向いちゃ駄目だぞ、陸!下向け下!」
樹「珍しく鈍臭いな陸、鼻血止まるまで外で休んでな。何に見とれてたのやら」
陸「悪い...」
純平「かわい子ちゃんでもいたんか〜?」
純平はただの鼻血だとわかると安心したのか、いつものように冗談混じりに笑う
マネージャーに箱ティッシュを渡され、1人俯きがちに外へ出た
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