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αの男
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純平「陸、結局鼻血止まらんかったな」
陸「ゲーム残り少なくてラッキーだったわ。あれがもし序盤だったら悔やまれた」
樹「ほんとだよな」
体育館の床にモップをかけながらたわいも無い会話を交わす
部活終了時刻までの数十分間、鼻血は微量ではあったが止まることなく出続けた
純平「ラッキーじゃねえよ〜、陸居ないとつまらん。ティッシュ詰めてでも参加すればよかったのにー」
樹「鼻にティッシュ詰めてバスケって、どんな拷問よ」
陸「息できなくて死ぬ」
あははと笑う樹
純平は納得いかないという顔で口を尖らせた
樹「そういや聞いたか?柔道部の新入生」
唐突に、樹が話題をふる
体育館を二つに分割するネットは片付けられ、柔道部もバスケ部と同じくモップをかけ始めていた
その奥の方で黙々とマットを運んでいる男を目で指して、樹は言う
樹「虎岩恭二郎」
純平「おお、名が体を表しとる...」
樹「全国大会三連覇らしいぜ」
純平「まじ!すげー奴じゃん」
練習は勿論のこと、後片付けまで他の誰よりも熱心に取り組むその男
虎岩恭二郎...
樹「αだとよ」
純平「だろうな〜」
α、か
俺も夢見た時期があった
あの日診断書を受け取るまでは
もしかしたら、自分はαなんじゃないか
両親は、そうだといいね、なんて笑ってたけど
俺は希望がないとは思っていなかった
実際、両親ともβであり、少し遠い親戚にはαだっていると聞いた
俺自身、周りより優れていると思った事こそないが、劣っているとも思ったことがなかった
悪くてもβ、少なくともΩではないだろう
そう思っていたし、確信に近いものがあった
・
・
・
[sex:♂Ω]
音が聞こえなかった
紙に印字されたその文字列を見下ろす間
俺は世界から切り離されたどこかに立っていた
どうして、
何で?
疑問だけがグルグルと頭の中に渦巻いていた
たった一文字の事実が、この先の人生を、一瞬にして真っ暗なモヤで覆ってしまった
「運命なんだよ、陸」
・
・
・
陸「...」
そんな運命
クソ喰らえだ
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