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αの男
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ピッ
ガラガラ、ゴトン
1階、屋外の渡り廊下
真っ赤な自動販売機の前
陸「(純平がいちごミルクで、樹は...お茶でいいか)」
腕と横腹でコーラを挟み、不自由な格好で小銭入れをゴソゴソと漁る
陸「あ」
数枚の小銭を掴んだ指の隙間から、10円玉が1枚こぼれ落ちた
見失わないように、慌てて目で追う
10円玉は渡り廊下をコロコロと転がり、2mほど転がった先で深緑色のスリッパに当たりパタリと倒れた
陸「...」
10円玉からゆっくりと視線を上へ移すと、そこに立っていたのは
陸「...虎岩恭二郎...」
恭二郎「...うっす」
ポカンと開いた口から思わず声が出た
虎岩は何故フルネーム、とでも言いたげな顔で不思議そうに俺を見下ろしている
恭二郎「...」
俺はその不思議な存在感に目が離せないでいた
すると突然虎岩がおもむろにしゃがみ込む
かと思うと、何かを拾って俺の目の前に差し出した
恭二郎「落し物です」
陸「ん?え、あ!サンキュ」
10円玉の事を思い出し、ようやく我に返ると俺は咄嗟に両手でそれを受け取った
必然、脇腹に挟んでいたコーラが滑り落ち、床に叩きつけられる
陸「あっ!うわ、嘘だろ...」
一瞬で泡立ったコーラに絶望する
虎岩は相変わらず無表情で、ただ少し呆れたようにコーラを拾いまた俺に手渡した
悪い、とそれを受け取ると、次は落とさないように注意して再び横腹に挟む
恭二郎「先輩って、ドジなんすか」
陸「は?」
突然口を開いたかと思えば、失礼な質問
恭二郎「前も鼻血出てたし」
陸「あれは...事故だよ」
恭二郎「今も...」
陸「これも事故!コーラなんかな、落としたって飲めんだよ」
俺はムキになって言い返した
無愛想な男かと思えば、とんだ生意気野郎だな
恭二郎「...」
虎岩は少し黙って、それから自販機の方に向き直って烏龍茶を一本買った
恭二郎「...............におい、気をつけた方がいいですよ」
虎岩はポツリと言い残すと、俺とは反対側の校舎の方へ歩き出した
ドキリ、と心臓が鳴る
におい
...?
・
・
・
まさか
バレた?
いや、そんなはずはない
フェロモンの抑制剤は毎日欠かさず飲んでいるし、ヒートもまだ先のはずだ
……だけど
あいつ、α
αは、Ωの匂いに敏感だと授業で習った事がある
陸「......まさか、な」
気のせいだ
きっと汗か何かの臭いの事を言ったんだろう
俺は飲み物を持ち直すと、樹たちの待つ教室へ向かった
恭二郎「...」
その背中に、虎岩の視線が静かに注がれている事に俺は気付かなかった
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