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破天荒
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内山「遅くなっちゃってごめんね。車狭いけど、座席後ろに倒していいから」
シートベルトをしめ、手際よく車を出す準備をしながら内山先生が喋りかけてくる
おそらく新車ではないが無駄な物がなく清潔感のある車内
バックミラーからぶら下がっているクマのチャームが女性らしい
陸「………すみません…」
内山「謝らないでよ!しんどいの分かってるから」
ブロロ、とエンジン音と共に振動が心臓に伝わる
相変わらず体は火照り、頭はぼうっとしているが
先程よりも容態は安定している
内山「じゃ、家まで道案内よろしくね」
学校の駐車場を出て、広い道路を真っ直ぐに進んでいく
外に見える街路樹をぼんやりと目で追っていた
内山「ねえ、お友達には話してないの?」
陸「?」
内山「あなたの荷物、保健室まで届けてくれた子がいたのよ、二人。あなたがどうして保健室にいるのか分かってないみたいだったけど」
陸「…ああ」
樹と純平か
結局あいつらには何も話していない
陸「……あいつら、良い奴だから」
そう、良い奴等だから
変な気を遣わせたくない、自然な関係でありたいのだ
内山「………………ねえ、人生諦めてるでしょ。」
赤信号、先程から僅かな音で流れているラジオが17時を告げる
内山「Ωに生まれたのは運命かもしれないけど、この先どうなるかは運命なんかじゃ決まらない」
陸「?どういう…」
内山「もう、将来なんかないって顔してるよ」
内山先生はやれやれといった目で俺を見る
俺は否定できずに窓の外へ視線を戻した
内山「確かにΩは発情期中に働けなくて無能だとか誘惑するしか脳がないとか、散々言われてるけど」
内山先生は左右を確認すると、ハンドルを右にきる
左手薬指の指輪が銀色に光った
内山「そんなの、ジジババが言ってる事!古い古い。私はそんなの、吹っ飛ばしちゃったもんね。私は仕事ができるΩになるんだからほっといて下さいって。あ、この信号曲がるんだっけ」
明るく愉快に話す先生の横顔を見る
劣性だとは決して思えない、真っ直ぐな瞳
その破天荒さが、少し羨ましくも思えた
内山「おかげさまでこの通り、ちゃんと先生やれてるでしょ。だからね、あなたもきっと大丈夫」
優しく微笑む彼女は、まさに女神のようだった
内山「諦めちゃ駄目。運命の好きにさせちゃ駄目よ」
ゾワゾワと走る寒気のような感覚
苦しくなる呼吸
再びじわじわと重くなる症状に返事をするのも億劫だったが、先生の言葉は耳の奥にしっかりと余韻をもって響いていた
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