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孤独な一週間
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パラパラと小雨が降り続く中、俺は歩いていた
空は灰色の雨雲に覆われ、辺りはすっかり薄暗くなっていた
背中に感じる温かな体温
温かというよりも、少し熱いくらいだった
耳元で聞こえる先輩の荒れた呼吸
苦しそうだ
腰に当たる硬い感触にも、気づかぬふりをした
陸「ぁ、っ……ぅ…はぁ……」
恭二郎「大丈夫すか…?」
時折、熱い吐息と共に漏れる小さな声
徐々に濃くなる先輩の匂いに正直俺も限界だったが、無心で邪念を振り払う事に務め、足を進めた
ここ数日間、学校で見かけなかった
匂いすら感じない
少し気になっていた
コンビニで出会った瞬間、その理由が分かった
先輩は発情期だった
どうして発情期のΩがこんな所へ居るのか?
この人は阿呆か?
保健の教科書に記された発情期のΩは、倦怠感と無気力、発作的な興奮状態で日常生活もままならないはず
買い物などもってのほかである
ただ、抑制剤を服用すれば可能になる場合もある
なるほど先輩は抑制剤を飲んだのか
そうは言ってもやはり匂いは感じられた
俺がαだからだろうか
全身がピリピリと緊張する
本能が疼くΩの匂い
Ωのフェロモンにあてられて変な気を起こさないようにと、俺は早々に店を出た
自宅へ向かって少し歩いたが、しばらくしてふと感じた妙な胸騒ぎ
俺はくるりと向きを変え、来た道を歩き始めていた
コンビニを通り過ぎたあたりで先輩の匂いを感じる
俺は焦っていた
匂いを辿り行き着いた場所で、焦りは怒りへと変わった
地下道、一際濃い匂いの中
考えるよりも体が動き出す方が早かった
「俺のだ」
男の胸ぐらを掴みあげて、何かを口走った
怒りのままに放り投げた
俺は何を言った?
走り去る男の後ろ姿を睨みつけた後、はっと我に返る
振り向くと、壁に寄りかかってぐったりしている先輩の姿があった
鼻腔を刺激する強烈な甘い匂いにクラクラした
「痛いとこ無いですか」
精一杯に冷静を装う
本心は焦りや怒りでおかしくなりそうだった
こんな気持ちは初めてだ
悟られないように深く息をつき、ドクドクと高鳴る心臓を鎮める
真顔でボロボロと涙を流す先輩をただ見つめた
何を言えばいい
俺には分からなかった
小さく震える先輩の隣に腰を下ろす
その間も、俺の中のαがΩを求めて今にも襲ってしまいそうだった
そんな本能を無理矢理に抑え、先輩の隣で涼しい顔を必死で作り上げる
陸「お前がそばに居ると俺、何か、変になりそうなんだよ」
Ωとして俺を拒絶した先輩
先輩の匂いが俺の理性を変にさせる
同じように、俺の匂いが先輩の理性を刺激しているのか
互いの本能が求め合うために、互いを苦しめる
理性が本能を縛り付ける
まるで拷問だ
俺はこの場から立ち去るべきだ
お互いの為に
それができないのは
何故だ?
この人のそばを離れたくないと思っている
何故だ?
背中を貸すという俺の提案に、以外にも素直に応じた先輩
相当身体が辛いらしい
俺の体格には及ばないものの、決して小柄ではない先輩の体は脱力しきって、体重が俺の背中にのしかかる
ドクドクと心臓の音を感じる
先輩の心臓か?いや、俺の方かもしれない
これは、想像よりも遥かに過酷な申し出をしてしまったかもしれない、そんなことを思いながら俺は足を進めた
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