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風邪
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保健室へ戻ると、既に内山先生の姿があった
内山「おかえり高橋君」
陸「っす」
内山先生に軽く会釈してベッドの方を見ると、横になった虎岩の周りに三人の生徒が立っていた
虎岩と同じ一年生のようだ
なんとなく見覚えのある面々、柔道部だろうか
一年生「じゃ、荷物ここ置いとくから」
一年生「ちゃんと休めよな!」
恭二郎「悪い…」
一年生「早く治さねえと、お前追い抜いて強くなっちゃうからな」
それはねえよ、と一年生同士で笑い合う姿はなんだか微笑ましかった
当然ではあるが、こうして見ると堅苦しく威圧感のある虎岩恭二郎という男も、案外普通の男子高校生なのだ
陸「ほら、水。とポカリ」
去っていく一年生たちとすれ違うように歩み寄り、ペットボトル差し出す
恭二郎「…ポカリ頼んでませんけど」
陸「うるせーな、黙って受け取れ」
半ば押し付けるように手渡す
虎岩は上半身を起こして素直にそれを受け取ると、マスクをずらしポカリの方の封を開けて飲み始めた
喉が痛むのか、あまり勢いがない
その時、どこからともなくピピピ、と機械音が鳴った
虎岩がモゾモゾと自らの服の中を漁ると、体温計が出てきた
体温を測っていたようだ
内山「うわっ嘘でしょ、38.2℃もあるよ」
陸「嘘だろお前」
内山「いつから熱っぽいの?」
恭二郎「昨日の夜から…」
陸「何で学校来たんだお前」
内山「呆れた」
虎岩は言い返す気力も無いのか、黙り込んでいる
しゅん、とした虎岩の姿は、普段より一回り小さく見えて何だか可愛らしかった
内山「学業熱心なのは結構だけど、体を大切にしなさい!もう今日は早退しなさいね。親御さんとか、迎え頼める人いる?」
内山先生はすっかり湯気の消えたコーヒーを一気に飲み干した
恭二郎「いないっす…自分、一人暮らしなんで」
陸「えっ、そうなん」
俺の周りに一人暮らしをしている奴はなかったので、思わず反応した
陸「何で一人暮らし?」
恭二郎「俺、スポーツ推薦で、他県から来たんです」
陸「へえ、すげーじゃん」
内山「虎岩君レベルなら沢山の学校が欲しがったでしょうね」
虎岩君争奪戦だったでしょうに柔道部の安藤先生結構粘ったのかしら、なんて新しくコーヒーを入れ始めながら内山先生が言う
陸「あれ、先生虎岩の事知ってるんすか」
内山「そりゃあ、なんたって保健室は噂話の宝庫だからね。めちゃ強な柔道部の新入生なんて、そりゃあ噂になるわよ」
出来たてのコーヒーをひと口すすり、すぐにアチチと口を離す内山先生
恭二郎「俺、歩いて帰ります」
おもむろにベッドから立ち上がる虎岩
すぐによろけて側にある机に手をついた
内山「無理しないの!」
陸「お前やっぱり阿呆だな」
虎岩に手を貸し、ベッドに座らせる
触れた虎岩の体は確かに熱を持っていた
内山「仕方ないわね、私が家まで送る」
内山先生は椅子の背もたれに掛けていた上着を羽織り車の鍵をポケットに突っ込むと、虎岩の荷物を持った
内山「虎岩君、車移動してくるから靴履き替えて外で待ってて。高橋君は教室戻りなさいね、もう昼休み終わっちゃうから」
陸「はい」
内山先生はパタパタとスリッパの音を響かせて保健室を出て行く
虎岩の方はふらふらしながらも俺に向けて会釈をし、下駄箱の方へと歩いて行った
その後ろ姿が曲がり角で見えなくなるまで、俺は何となく見送っていた
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