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αとΩ
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「アンパン取った!!」
「あっ最後のカレーパンがっ」
「ちくしょー間に合わんかった」
「おにぎりまだ残ってますか!?」
昼休み
授業終了のチャイムが鳴り終わるや否や
下駄箱の前に構える小さな購買にはあっという間に生徒が群がり大騒ぎになっていた
「こらっ喧嘩するんじゃないよ!」
購買のおばちゃんこと非常勤販売員の怒号も混じり、てんやわんやだ
そんな中いち早くここへ到着した俺は既に二番人気の特製焼きそばパンを手にしていた
今日は純平が古典の補習だと言い、それに付き合うと樹まで別棟へ行ってしまった
樹は本当に面倒見がいいな、世話焼きというべきか
そういう訳で今日の俺は一人飯だ
焼きそばパン片手に胸ポケットから意気揚々と小銭入れを取り出し、がま口をパカリと開いた
陸「…………」
十、二十、三十
小銭入れの中には、たったの60円しか入っていなかった
俺は目の前の現実を受け止めきれず、その場に立ち尽くす
うっかりしていた
購買のおばちゃんからの視線が痛い
恭二郎「先輩、金無いんすか」
陸「うわ!びっくりした」
突然真上から声がしたと思えば、虎岩だ
俺に真上から声をかけられる奴など他に居ない
虎岩は俺の小銭入れの中身を覗き込むように首を曲げていた
陸「たまたま…無かったんだよ…つか見るな!」
俺は慌てて小銭入れを隠す
虎岩はフン、と前を向き直り、その筋肉質な腕をヌルッと伸ばしアンパンを容易くひょいと手に取った
群衆をものともしない規格外のタッパと腕の長さ
その異質な存在感に辺りの生徒等もチラチラと虎岩に目をやっている
陸「(物理的にかなり目立ってるな)」
そして何故か焼きそばパンを俺の手から軽く奪い取ると、アンパンと一緒に購買のおばちゃんに渡した
恭二郎「これ二つ、お願いします」
陸「え」
おばちゃん「はいよ〜アンタ相変わらずでっかいねえ!たくさん食べてすくすく育ちなよお」
恭二郎「ッス」
これ以上育ってどうするんだ
咄嗟にそんな事を思う俺の手に、焼きそばパンが帰ってきた
陸「虎岩、お前………」
俺は感動していた
陸「良い奴だな〜!」
スタスタと廊下を歩いて去ってゆく虎岩
その肩に、感激した勢いで自分の肩をぶつける
岩のように硬い奴の体はピクリともしなかった
恭二郎「別に」
陸「何だよ、生意気な奴だと思ってたけど、お前めちゃ優しいな」
虎岩は少し照れたようにそっぽを向いた
恭二郎「生意気は余計です」
俺の言葉に、予想以上に照れる虎岩
なんだか可愛くてつい絡みたくなってしまうのだった
陸「なあ、一緒に食わね?俺今日ぼっち飯でさあ」
恭二郎「…いいっすけど」
陸「え」
恭二郎「え?」
陸「断られると思った」
俺の何気無い申し出に、虎岩は素直に承諾した
それが意外で、俺は嬉しいような、ソワソワするような、何とも言えない気持ちになった
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