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家族団欒
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陸「んまい」
母「そう?良かった」
父「これもうまいよ」
母「はいはいありがと」
両親が出張から戻りしばらく経つ
我が家は元の賑わいを取り戻していた
母「…陸、何か良い事あった?」
唐揚げを頬張る俺に母が言う
陸「ん…別に。なんで?」
母「何となく。最近楽しそうだなーって」
母は口元をニヤつかせ楽しそうに言うと、サラダに乗ったミニトマトをひとつ摘み口へ放り込んだ
父「む、父さんも思ってたぞ」
母「嘘ね」
父「…」
弱気な父は母の一言にしゅんと小さくなり、キャベツの千切りを口へ入れるとモソモソと咀嚼した
母「学校で何かあったんでしょ。なあに、もしかして彼女できた?」
父「何っ」
陸「違うって」
遠慮というものを知らない母は押し気味に俺に質問を重ねる
父は彼女、という単語に妙に反応を示す生き物だ
両親からの期待の眼差しを軽く無視して白米を頬張る
とはいえ、母の言う通り最近の俺は少し調子が良いのかもしれない
内山先生や虎岩など、新しい人間関係も芽生え毎日が充実していると言える
無自覚のうちに態度に出ていたようだ
陸「保健室の先生が俺と同じΩでさ、色々話聞いてくれんの。それに気が合いそうな後輩ができたんだよ、前もそいつと昼飯一緒に食った」
へえ、と嬉しそうに俺の話に耳を傾ける両親
二人が共働きなので俺は幼い頃から鍵っ子だったが、寂しさを感じる事はほとんど無かった
二人がいつでも大きな愛情を持って育ててくれている事を知っていたから
両親にも、一人っ子の俺に寂しい思いをさせまいという気持ちがあったのだと思う
家に帰れば、おかえりと言って迎えられる
幼い俺の話を、二人はいつまでも嬉しそうに聞いた
そして最後には良かったね、と言って頭を撫でてくれるのだった
母「Ωの事は、母さん達がいくら勉強したってわかってあげられない事ばっかだから、そんな先生と出会えたんなら母さんも嬉しいな」
心なしか母の瞳が潤んでいる
父「その後輩っていうのは、女の子?」
陸「大男だよ」
父はどうしても彼女という単語から離れられないようだ
そんな父に、虎岩のことを丁寧に説明してやった
父「へー!柔道全国大会三連覇か!すごい子がいるんだねえ」
陸「けど甘党なんだよ、意外だよな」
母「樹君より真面目なの?」
陸「樹の1000倍真面目、クソ真面目、けどすげぇ良い奴」
父母「へぇ〜」
陸「αだって」
父「…そうか、αか〜」
この空気、もう慣れっ子だ
そしてこんな空気を振り払う事にも慣れている
陸「そういや、こないだの模試で樹がまた1位取ったらしい」
母「えーすごい!さすが樹君」
陸「純平は下から17位」
父母「ああ〜」
樹と純平はよく家にも遊びに来る為両親とも顔なじみだ
樹に関しては小学生からの付き合いなので、家族ぐるみで仲が良い
父「そんで、陸は何位だったん」
陸「んー、何位だったかな〜」
母「誤魔化すなっ」
陸「あいてっ」
母が笑いながら俺の背中を軽く叩いた
陸「ごちそーさまでした」
母に茶々を入れられながら自分の食器をさげ、手際よく洗い物を済ませる
自分の皿は自分で洗う、我が家のルールだ
惜しみなく俺に愛情を注いでくれる両親、一度はそれを疎ましく思った時期もあったが
つくづく、俺は恵まれた人間だと実感する
自分の性の問題など忘れてしまうほど、この家に居ると心が安らいだ
バラエティ番組を観て笑い合う両親の後ろ姿を眺めながら、無意識に表情が緩むのだった
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