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番
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陸「失礼しまーす」
内山「おっ、久しぶりだね」
昼休み、保健室
陸「先生これ、うちの母さんから先生にって」
内山「えっなになに、私に?何故?」
母がΩの先生に渡せとしつこいので仕方なく持参した菓子折りを内山先生に差し出す
陸「母さんに先生の話したら、お世話になりっぱなしで悪いからって。俺、自分以外のΩと会うの先生が初めてでさ、母さんからも先生によろしくって…」
母からの伝言とはいえ、俺は気恥ずかしくて先生の目を見ることなく告げた
内山「お母さま…」
先生は眉を八の字にして手で口元を押さえ感激の表情を浮かべる
内山「本当は保護者から物品の謝礼とか受け取るの駄目なんだけど…内緒で頂くね、ありがとう」
俺から菓子折の袋を受け取ると、内山先生は人差し指を口元にあてて、しー、と笑った
陸「それじゃ、俺はこれで…」
内山「あ、待って!」
用が済んだので教室へ戻ろうとする俺を内山先生が呼び止める
内山「こないだ相談してくれた、ヒートの周期が狂ったって件、結局答えてなかったよね」
陸「ああ、そういえば」
内山「ちょっとね、思い当たる事があるの」
先生に促され、俺は椅子へ腰掛ける
続くように先生自らもゆっくりと椅子へ腰を下ろした
先生は一体どんな話を聞かせてくれるのかと、俺はやや前のめりの姿勢でごくりと喉を鳴らした
内山「……もしかしたら、運命の番が、近くにいるのかも」
内山先生は両手を組み、神妙な面持ちで話し始める
右手の人差し指が、左手薬指の指輪に触れた
陸「ツガイ?」
内山「そう。これは学校じゃ教えてくれない事なんだけど」
先生と俺、二人きりの空間
先生の言葉を待つわずかな間、給湯器の発する微かな音さえも容赦なく鼓膜を震わせた
内山「αとΩ、稀に強烈に惹かれ合う事があるの。たった一人の相手だけにね。一般的にはそれを運命の番って言うの」
先生はコーヒーを1口すすり、話を続ける
内山「まさに運命的なものでね…簡単に言うと、運命の相手だね。ドラマみたいな」
運命の番となりうる相手が近くに現れると、相手のフェロモンにより無意識にホルモンバランスが乱されることでヒートの周期が狂ったり、症状が普段よりも重く、長引くなどの変化が起こる場合がある
そう先生は話した
陸「…ってことは、俺の近くにその…番?になるかもしれない相手が居る、てことすか?」
内山「そういうことになるね」
心当たりある?なんて内山先生が俺に尋ねる
心当たりなんて
心当たり…
・
・
・
『お前がそばに居ると俺、何か、変になりそうなんだよ』
陸「あ」
内山「何っ?心当たりあった?」
陸「え、あ、いや…」
内山先生が興味津々に俺を見る
俺はブルブルと頭を振り、頭のあちこちに現れた大男の姿を振り払った
内山「まあ……あの…教育の為に言うけど…」
内山先生は視線を窓の外へやり、少し気まずそうに指をモジモジさせた
内山「もしも、もしもね…相手と、その…そういう事に、なった場合…」
陸「避妊しろ、でしょ?わかってますって」
内山「う、うん…そう…」
Ω性は男性であろうと妊娠する
一般的な男性とはそもそも体の造りが違うのだから
教科書にも載っている常識だ
教員として性の知識を生徒に伝える、重要な役目であるが、センシティブな内容を扱うのはやはり度胸が要るようで
内山先生はぎこちなくえへへと笑った
内山「あ!やば、高橋君、もう授業始まっちゃうよ!」
陸「わ!まじだ、じゃ、俺行きます」
先生の言葉に慌てて室内の壁掛け時計を見ると、午後の授業開始時間まで既に5分を切っていた
俺は慌てて保健室飛び出し、2階の教室へ向かって階段を2段飛ばしで一気に駆け上がった
・
・
・
運命の番、か
虎岩がそばに居る時、奴のにおいを感じた時にのみ覚える気分の高揚
そして、妙な安心感
俺が虎岩へ抱いていた特別な感情は
それが故だったのだろうか
いや、逸るな
そんなにも都合よく、同じ学舎にたった一人の運命の番がいるものか
陸「(…)」
虎岩は、俺と初めて出会った時から気付いていたと言った
俺がΩであると
あの日の俺の体調は万全で、抑制剤もきちんと服用していたにもかかわらず、奴は気付いた
そんなことは初めてだった
これまで誰にも気付かれた事は無かったのに
陸「(……番…)」
悶々と考えながら走っているうちに俺は教室へ到着し、授業開始のチャイムと同時に教室の戸を開いた
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