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楽しいお昼休み
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陸「よ」
恭二郎「っス」
屋上の重い扉を開くと、そこにはフェンスに背を向けて胡座をかき弁当を開く虎岩の姿があった
陸「やっぱ、居ると思った」
先客に断るでもなくよいせと隣に腰を降ろす
そんな俺を虎岩はごく自然に受け入れた
いつからか、俺と虎岩はよく昼休みを屋上で共に過ごすようになっていた
どちらが言い出した訳でもなく、ふらりと屋上へ行けばお互いが顔を合わせる、そんな奇妙な関係だった
陸「毎回焼肉弁当だな」
恭二郎「選ぶの面倒くさくて」
陸「わかる、けど野菜足りてない」
恭二郎「野菜ジュース飲んでますから」
陸「でたよ、野菜ジュースを野菜とカウントする奴」
たわいも無い会話
くだらないやり取り
虎岩は俺よりも無愛想で、返答も正直全く面白くない
けれどそれが逆に面白く思えて、虎岩恭二郎という人間はすっかり俺のツボにはまり込んでしまっていた
陸「俺のトマトやるから食え」
恭二郎「嫌いなもの押し付けないでください」
陸「チッ」
恭二郎「舌打ちしないで下さい」
母親が気まぐれで作る弁当には、毎回トマトが入っている
母親の好物だからだ
よく冷えたトマトは平気だが、弁当のぬるいトマトを俺はどうしても好きになれない
陸「あのさー、お前は教室とかで皆と飯食わんの?」
他意のない質問、自分の弁当をかきこみながら問う
虎岩は野菜ジュースをひと口、ゴクリと飲み干すと応えた
恭二郎「教室は騒がしくて」
胡座を崩し、脚を伸ばす虎岩
いつのまにか焼肉弁当は空になっている
恭二郎「ここの方が落ち着いて飯食えるんで、好きなんすよね」
そう言う虎岩の横顔は柔らかかった
俺の脳裏に、教室で騒ぐ女子生徒達の姿、購買で虎岩に注がれた好奇の目がよぎる
入学当初から虎岩は目立っていた
それは学年を超え、2年生、3年生までもが存在を認知するほど
『すごい新入生』
凡人から言わせれば、なんと名誉な、羨ましいレッテルだろう
けれど
当の本人には疎ましい限りであったのかもしれない
周囲の声に、息が詰まるような日々を過ごしていたのかもしれない
『αなんだって』
ああ、そうか
俺と同じだ
こいつも己の性に囚われて生きているのだ
αだから、優性だから
自ら選んで産まれてきた訳ではないのに
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恭二郎「先輩は?友達いないんすか」
陸「おるわボケ」
そんな2人の上空、真白な飛行機が夏の青い空を悠々と飛んでいた
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