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雨
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考えろ、考えろ、考えろ
俺の思考は凄まじい速さで回った
想像したくも無い、最悪の可能性
それを否定する為に、俺は思考を止めなかった
恭二郎「あ」
刹那、ある場所が脳裏に浮かぶ
ここからそう遠くない、小さな公園
俺は走った
確証もなくただ足を進めた
公園に着いた頃には息が上がっていた
多目的トイレの前に立つ
焦燥感の中に僅かに混じっていた怒りの感情は、たちまちはっきりとした輪郭で、どろどろと質を変え胸いっぱい、溢れ出るほどに広がっていた
戸の向こう側から、脳が麻痺するほど濃厚な二種類のフェロモンが漏れ出していたからだ
最悪の可能性が、現実となってしまった
俺は戸を開こうと試みるが、もちろん鍵が掛かっている
しかしそこで引き下がれるほどの理性を既に持ち合わせてはいなかった
助走をつけ、戸を目掛け思い切り体当たりをする
戸の金具部分は思いの外脆かったようで、二度の突進で容易く破壊できた
戸を開くと同時に個室内から流れ出たフェロモンが鼻腔に充満し、その濃厚さに思わず眉を寄せる
個室内には案の定高橋先輩と、一人の男
何やら見覚えがあるような、ないような。その男の衣服は乱れ、奴の足元に座り込む先輩の顔は首まで真っ赤に染まり、口元は涎だろうか、何やら濡れていた
・
・
気が付いた頃には灰色がかった空の下、降り注ぐ雨を背中に受けながら俺は男の体を地面に押し付け拘束していた
「てめぇ、マジで調子乗んなや、あのΩは俺が見つけたんだ、誰がモノにしようが勝手だろーが!」
足掻き、喚く男
そいつの言葉がやけにチクリと刺さった
頭に血が上るのを感じる
あのΩ?
モノ?
お前のような人間が
あの人の何を知っている
あの人の葛藤を
あの人の人生を
お前のような人間が
お前のような
・
・
・
恭二郎「…!」
我に返ると、目の前には威勢を失いただ震える男がいた
俺は自身が暴走していた事を悟り戸惑いながら男を解放する
男は逃げるようにそそくさとその場を去って行った
口に広がる鉄の味に眉をひそめ、先輩の元へ駆けた
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