アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
コンドーム
-
・
・
・
虎岩少年、15歳
まだ若干冬の寒さの残る春の早朝、彼はスーツケース片手に駅のホームに立っていた
「元気でね」
恭二郎「ああ」
「寂しくなるよぉ恭二郎ぉぉ…」
恭二郎「ああ、そうだな」
「本当に遠くの学校行っちゃうんだね…」
恭二郎「そんなに遠くはない」
虎岩少年と向かい合い涙を零す少年は、虎岩少年の幼稚園以来の友人、佐藤弘(ひろむ)君である
弘「たまには帰って来なよ」
恭二郎「ああ」
弘「試合、見に行くからね」
恭二郎「ああ」
弘「あ〜ヤダヤダヤダ!やっぱり寂しいよぉ〜」
恭二郎「お前は相変わらず喋り方が個性的だな」
列車発車の時刻が刻々と迫る
佐藤少年はおもむろに自らの鞄を漁り始めると、A4サイズほどの紙袋を取り出し虎岩少年に手渡した
ちらりと覗くと、チョコレート菓子の包みが見える
弘「別れ際に贈り物って、照れるよね…なんか、死亡フラグ立ってない?うける」
恭二郎「死亡フラグ…?」
佐藤少年は鼻の頭を赤くして鼻水垂れながらヘラりと笑った
幼い頃から能天気で、常時ヘラヘラしている人間であったが、このような場面で涙を流しながらも尚笑っている彼に虎岩少年はふっと笑みがこぼれるのであった
恭二郎「弘は変わらないな……それじゃ、行ってくる」
列車がホームへ到着し、プシュ、と音を立てる
佐藤少年に手を振り、大きな一歩で列車に乗り込む虎岩少年
席に着き、列車が動き出す
ふと窓の外に目をやると、両手を大きく振り回す佐藤少年の姿
虎岩少年は呆れたように笑い、ひらひらと手を振り返して見せた
・
・
陸「…これゴムの話?」
恭二郎「ここからっス」
・
・
恭二郎「(高そうなチョコだな)」
列車に揺られ数十分、ふと思い立ち、弘がくれた紙袋から品を取り出してみることにした
中にはチョコレートの箱と、なにやら妙な生き物のキーホルダー
恭二郎「(………何だ?犬…イノシシか?いや、猫だろうか)」
そして紙袋の底、一回り小さな箱の存在に気が付く
手に取り、まじまじと見つめ、そしてそっと紙袋に戻した
恭二郎「(………何故)」
再びちらりと箱に目をやり、確認する
やはり、何度見てもコンドームの箱に違いなかった
彼なりのジョークのつもりか
弘、彼は道端で成人雑誌を拾っては持ち帰るようなスケベで阿呆な奴ではあったが、まさかここまでだったとは
多少認識が甘かったようだ
走る列車の中一人頭を抱えていると、箱に何か文字が書いてあることに気が付く
「恭二郎へ。離れ離れになっても、僕たちはずっと親友だからね。お前が柔道で世界にはばたく時を心持ちにしてるよ。応援してる。僕は先にバタフライではばたいちゃうけどね!ば〜い
〈ツイシン〉ひとり暮らしってことは、好きなこ、連れ込めるよね。いいなあ。カノジョできたら内緒にしないで教えてよね。僕からの前祝いだよ。楽しんでね♡」
恭二郎「………心待ちの字、間違えてる」
やはり阿呆のようだ
前祝いというのも使い方が変だ
というか別れる親友への文をコンドームの箱に書くな
予想外の贈り物に拍子抜けした俺は、やれやれ、天を仰いで静かに目を閉じた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
61 / 69