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各国壁ドン事情 緑の国編1
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「あー、パウリーネ王陛下に壁ドンされてみてぇ……」
緑の国の王宮庭園で警備を行っていた衛兵の隣で、同僚の衛兵がぽつりとそう呟いた。そんな彼の呟きに、衛兵は顔を顰めて苦言を呈する。
「おいお前、不敬だぞ」
咎めるように言われ、壁ドン発言をした同僚はわざとらしく肩を竦めてみせた。
「そりゃ、俺だって本当にして貰えるなんて欠片も思っちゃいないさ。でも、想像してみろよ。パウリーネ王陛下だぞ? して頂けるならして貰いたいだろ」
「…………まぁ」
思わず想像してしまったらしい衛兵が、言葉を濁す。勿論、敬愛する緑の王に壁ドンをされて嬉しくない訳がない。可能かどうかはさておき、して貰いたいかどうかだけで言うなら、それはして貰いたいに決まっている。
とはいえ、不敬なものは不敬だ。衛兵は、自身の想像を打ち消すように咳払いをしてから、ほらみろと指を差してくる同僚に対し、じとっとした目を向けた。
「仮にもしそう思ったとしても、私はそんな明け透けなことは言わない」
「思ったんなら同罪だろぉ?」
「というかお前、なんでする側じゃなくて、される側なんだ?」
衛兵が不思議そうに言えば、同僚は、馬鹿かお前、と顔を顰めて返した。
「して貰うならともかく、俺がする側なのは流石にまずいだろ。畏れ多すぎるし」
「して貰いたい、というのも十分に不敬だと思うんだが。……まぁ確かに、する側となると、最早不敬を通り越した悪行極まりない気がするな」
衛兵の言葉に、同僚がうんうんと頷く。
「そうだろ? パウリーネ王陛下に壁ドンなんてした日には、こう、運が良くてただの左遷……」
「運が悪かったら近衛兵に畳まれるか」
「いや、陛下に吹き飛ばされる」
「……ああ……」
同僚の言葉に衛兵は、確かに近衛兵よりも陛下の方が早く動くだろうな、と思った。
「それで生きていられたらいいけどよ」
「いや、流石に弁明の前に殺すような方じゃないだろう」
「判ってるけど。判んないだろ」
「……まぁ……」
緑の王は一見たおやかで大人しくお淑やかそうな女性だが、あくまでも一見しての話だ。物腰こそ穏やかだが、実際そんなに穏やかな人物ではないというのは、国民たちの共通認識である。要するに、キレると怖い。
勿論、民を大切にしているあの王が、いきなり民の命をどうこうしてしまうということはないだろう。が、それはそれとして、無礼に対する仕置きは当然の義務として行使される筈だ。そしてその場合、手加減はしても容赦はしないのが、当代の緑の女王である。
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