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各国壁ドン事情 萌木の国編2
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「まったく……。ああ、大変失礼致しました、ジールワイス王陛下」
「いいや、気にすることはないよ。王がここまで近くにいるのも、子供たちには物珍しいのだろうさ」
恐縮する男に笑いかければ、深々とその頭が下がった。
その後、農家の主と別れた王は、案内なしに色々と見て回ることにした。
柔らかな風が、作物の緑や青々とした草木の心地良い香りを運んでくる。萌木の王は書類仕事を苦に思うタイプではないが、緑の国とはまた違う自国の風の清らかさを全身で感じるのは好きだった。
気持ちの良い風と、作物の彩りに、子供たちが遊ぶ声も聞こえてきて。まさに平和という言葉がぴったりだ。
「……おや?」
「どうなさいました?」
思わず呟いた王の視線の先にいたのは、先程覗き見をしていた子供たちだった。開けた公園のような場所で、追いかけっこをしている子供、向かい合って何事かしている子供、それを見ている子供とがいて、随分楽しそうな様子だ。
そういえば、とそこで萌木の王は壁ドンのことを思い出した。遊んでいる子らは、王の供をする臣下の子供と大体同年代くらいである。となれば、彼らもまた、壁ドンが好きなのだろうか。
「陛下?」
「いや、少しね」
そう言った萌木の王は、子供たちの元へ足を進めていった。子供らは遊びに夢中になっていて、近づいてくる自国の王の存在には気づかない。追いかけっこをしている子は見たままだが、では向き合って遊んでいる子供たちは何をしているのかと様子を窺うと、どうやら独楽回しをして遊んでいるらしかった。といっても、使っているのは既製品の独楽ではない。具現魔法が盛んな萌木らしく、各々が魔法で形成した独楽を使い、勝敗を争っているようだ。
懐かしいな、と萌木の王は目を細めた。遠い昔に、似たようなことを兄弟たちとやった記憶がある。独楽で遊ぶ子供たちとは違い、当時の王と兄弟が魔法で作り出したのはミニチュアサイズの生物だったが、やっていることは同じようなものだ。兄を打倒するため、魔法を研鑽した日々は良い思い出である。
そこで唐突に、萌木の王は気づいた。
「ああ、成程」
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