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各国壁ドン事情 紫の国編2
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王の自室は紫で統一された落ち着いた部屋だったのだが、そこには大量のぬいぐるみと可愛らしい小物の数々が溢れんばかりに置かれていたのだ。ベッドの上にも同じように、可愛らしいぬいぐるみがところ狭しと並べられており、ちょうどその中心に埋もれるようにして、王が横になっていた。大きめの羽兎(緑の国の固有種だ)のぬいぐるみを抱き締めて幸せそうにしている姿に、世話係の彼女は完全に心臓を撃ち抜かれてしまった。
可愛い。
うちの王様、めっちゃ可愛い。
ぎゅん、と音を立てた胸に思わずその場にしゃがみこんでしまったことは、失態だったと言えよう。
もう三十を過ぎた、己よりも年上の女性に対して(しかも相手は王である)どうなのかと思わなくもなかったが、それはそれとして、可愛いと思ってしまったのだから仕方がない。
いわゆる、ギャップ萌えという奴だった。
そこまでを思い起こしたところで、世話係ははっと我に返る。そうではない。それどころではない。今重要なのは、自分の問い掛けに対する王の返答が、予想外のものであったことである。
「何。どうしたの」
「あっ、いえっ」
訝し気な紫の王に見据えられて、びくりと肩を跳ねさせた世話係は、慌てて背筋を正した。それから少し迷った末に、ティーカップを手にじっとこちらを見ている紫の王に対して、おずおずと切り出す。
「その、ベルマ王陛下……」
「なに」
「ほ、本当に、よろしいのですか……?」
世話係の問い掛けに、紫の王は僅かに眉間にしわを寄せた。そんな主君の反応に恐縮する世話係をじっと見つめたまま、王がカップをテーブルに置く。
「壁ドン、とか言うの、やってほしいんでしょ? 良いよ」
聞き間違いではなかった。本当に、壁ドンをしてくださると仰った。
「ウッ!!」
予想外だった返答を貰った世話係は、あまりの衝撃に思わず胸を押さえてしまった。どうもこの世話係は、反応が過剰な節があるようだ。
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