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各国壁ドン事情 紫の国編3
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「どうしたの? 体調悪いなら、仕事代わって貰って、さっさと休んで」
つっけんどんな言い方に聞こえるが、その実臣下の身を心から案じているが故の発言だ。それを十二分に判っている世話係は、王が我が身を心配してくれているという多幸感に倒れそうになったが、なんとか耐えてみせる。
「だっ、大丈夫です、はい……」
言いながら、世話係は先程自分が口にしたことを反芻する。
あろうことか彼女は、ちょっとした気の緩みから、王陛下に壁ドンをされたいという心の声を漏らしてしまったのだ。
これまでの奇行に近い反応からも判るように、この世話係は少し異常なほどに紫の王を推している。それ故に、最近流行りの壁ドンを紫の王がしたら絶対に可愛いに決まっている、と信じて止まず、王によって壁に追い詰められ、腕の中に閉じ込められ、あのシルバーグレイの瞳に下から見上げられたら心臓が止まりかねない、などと不埒な妄想を抱いたのである。そしてそれをぽろっと零してしまった結果、
(ま、まさか、承諾してくださるだなんて……)
こんな妄想が真に叶うなど欠片も思っていなかったのだが、世の中何が起こるか判らないものである。
(どうしよう……何の前触れ……? 私、明日死んじゃうのかしら……?)
勝手に己の死を悟った世話係は、しかし慌てて首を横に振った。
(だめ、死ねない……。私には陛下のお世話をさせて頂くっていう大事な仕事が……。いえ、何よりも、異動の指令が出るまでは、お傍でもっと陛下の可愛らしさを堪能したい……)
どこまでも煩悩に満ち溢れた彼女の思いは、幸いなことに口から飛び出ることはなかった。ただ、不埒な思考を巡らせているこの間、妙な沈黙が場にもたらされており、王は訝し気に眉を顰めた。
「本当に平気?」
「はっ、はい!」
慌てて背筋を正し、世話係は脂下がりそうな顔をなんとか引き締めた。そんな彼女のことを、王は少しの間じっと見つめたが、特に無理はしていないと納得したのか、判った、と言って扉の方を指差した。
「じゃあ、そこ、下がって」
「は、……下がる、のですか?」
「そう。扉の前まで行って」
唐突な命に内心で首を傾げるも、世話係はすぐに命令通り、部屋のドアの前まで下がった。それを確認した王が、こくりと頷く。
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