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各国壁ドン事情 金の国編1
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ギルディスティアフォンガルド王国の幼き王は、遅い昼食を求めてひとり厨房へと足を進めていた。
普段は大体同じ時間に昼食を取っているのだが、今日は所謂休養日で、朝から自身の魔術研究室に篭っていたため、ふと気づけば昼食を食いっぱぐれてしまっていたのだ。
王と言う存在は得てして多忙ではあるものの、自由時間が全くないわけではない。公務の合間に趣味に手を出す時間もあるし、国の情勢が落ち着いているときならば、丸一日休みを取ることもできる。今の金の王は、まさにその権利を行使している真っ最中なのだ。
そも、休息とは上の者こそしっかり取るべきだ、と王は考える。そうするのが難しい場合もあることは承知しているが、上の者がひっきりなしに働いていては、下の者まで休む時間を奪われてしまうのだ。
王は民を導くものだ。故に率先して働くべきであるが、働くことしかできない王は無能である、というのが王の持論だ。余暇も作れぬような有様は、単なる仕事の配分ミスである。王が一人で全てをこなさなくて良いように、臣下たちのサポートがあるのだ。ならば、あらゆる全てを己でこなそうとするなど、それは最早臣下に対する冒涜だろう。
そんなわけで、己の持論にのっとって久方ぶりに丸一日の休暇を貰った王は、趣味も兼ねた研究に勤しんでいた。“創世”の二つ名を戴く第一位の冠位錬金魔術師である王は、魔術のこととなると寝食すら忘れて没頭してしまうことが多い。無論、それで本来の職務をおろそかにすることはないが、逆を言えば職務さえなければ一日中魔術の研究に終始することさえある。王自身も、休暇の際は可能な限り魔術の研究に集中したいからと、緊急時以外に誰かが研究室へ出入りすることを禁じている。その結果、昼時を過ぎ、太陽が随分低い位置に傾くまで、王は己の空腹に気づくことができなかった。
空腹に気づいたときには既に夕食の方が近いような時間だったので、いっそ夕食まで待っても良かったのだが、一度認識してしまった空腹を抱えたままではどうにも集中することができず、こうして食料を求めて研究室を抜け出してきたのである。
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