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各国壁ドン事情 金の国編2
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幼子のようで恥ずかしい、などと考えながら歩いていた幼王は、ふと前方に見えた姿に二、三度瞬きをしたあと、顔を明るくして足を速めた。
「こんにちは」
「おや、ギルヴィス王陛下。御機嫌よう」
「はい、御機嫌よう」
足を止めて振り返った男は、官吏の一人だった。金の王がまだ王子であった頃から少しばかり交流があり、比較的親しい仲の相手である。
「お供も連れずに珍しいですね。本日はお一人でいらっしゃるのですか?」
「そうなんです。……実は、これから昼食を頂こうかと……」
こそりと小さな声でそう言った王に、官吏が首を傾げる。
「このようなお時間に昼食ですか? ……もしや、また研究室に篭っていらっしゃったのですね?」
図星をつかれた王が、笑いながら僅かばかり目を逸らす。そんな王の反応を見た官吏は、口に出さないまでも、仕方ないなぁと言うような表情を覗かせた。王がもっと幼く、まだ王でなかった頃、寝食忘れて研究に没頭した結果、空腹にへたって倒れてしまったことがあるのだが、そのとき助けてくれたのが、この官吏なのだ。あの頃と変わらずまだまだ子供だと思われたかもしれない、と思った王は、気恥ずかしさにそっと頬を赤らめた。
なんとか話を逸らせないだろうかと考えて視線を巡らせていた王は、官吏が抱えている書類に紛れている一冊の本に目を留めた。
「……あ、その本は」
「はい? ああ、これでしょうか」
す、と官吏が差し出した本の表紙を見て、王は目を輝かせた。
「これは、今大陸中で話題になっている本ですね!」
「おや、ご存知でしたか」
「勿論です」
金の国の民は新しいもの好きである。そんな民を束ねる王家はその筆頭と言っても過言ではなく、『王家がまず率先せよ』という家訓があるほど、新しいものや流行りのものに目がないのだ。王も漏れなくそのクチであり、今大陸で大流行しているこの本も、しっかり購入済みである。
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