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各国壁ドン事情 金の国編3
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「貸して欲しいという同僚がおりまして、書類を届けるついでに取り敢えず一巻だけ貸しておこうと思ったのです」
「なるほど。それは素敵ですね」
「はい、中々面白い物語なので、語れる友人が増えるのは嬉しい限りです。私としましては、一巻だと特に終わりの方の、」
「ああっ、待ってください!」
慌てたような声を上げた王に、官吏は目を丸くして言葉を切った。それにほっと胸を撫で下ろした王は、少し申し訳なさそうな顔で官吏を見上げながら、実は、と口を開く。
「私もその本は購入したのですが、まだ読めていないのです。なので、内容については控えて頂けませんか?」
多忙な王は何かと忙しく、本を読む時間を作れずにいたのだ。今日も本を読むか研究をするかで迷った末、どうしても試しておきたい術式があったため、結局研究を取ってしまった。
という訳で内容に関する言及は避けて欲しい、という王のお願いに、官吏は眉を下げた。
「それは申し訳ございません。危うくネタバレをしてしまうところでした」
「いいえ、どうぞお気になさらず。もしも私が読破した暁には、是非お話をお聞かせくださいね」
「はい、勿論でございます。……しかし陛下、内容については、本当にまったくご存知ないのですか?」
官吏の問いに、王は少し考えてから口を開いた。
「あらすじ程度は知っておりますよ。ああ、あとは、“壁ドン”、でしたか」
「おや、そちらはご存知で」
「流石に、どうしても耳に入ってしまいまして。ときめきがどうとか、女性に特に人気だとか」
自分で読むまではできる限り情報を遮断しようと努めた王だったが、大陸中で流行している本の内容を完全に知らぬままでいる、というのは難しい。本の中に出てくるらしい壁ドンとやらは特に巷で流行っているようで、うっすらと耳に入ってきてしまったのだ。
とはいえやはり、ぼんやりとした情報しか知らない。それを伝えれば、官吏は少しばかり考えるような素振りを見せた後、ふふ、と口の端に笑みを上らせてみせた。
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