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各国壁ドン事情 金の国編8
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それでは失礼致します、という師団長の言葉を聞いて、金の王はわくわくと彼の動向を観察した。一歩、師団長は足を踏み出して、王へと近づく。その距離はいつになく近いもので、反射的に王は足を引いて下がるのだが、それを埋めるように更に近づかれ、追い詰められる形になった王の背が、とんっと壁にぶつかった。
顔を目一杯上げて見上げる王を見つめたまま、師団長がすっと身を屈める。それと同時に、王の顔の横を掠めるようにして、彼の左手がどんっと壁を叩いた。いささか乱暴な動作で壁についた手をそのままに、師団長が肘を曲げ、秀麗な顔をぐいっと王の顔に近づける。驚くほど近くなったその距離に、王はぽかりと呆けてしまった。
ごく至近距離から見下ろしてくる赤い瞳がすっと細められ、師団長の右手の指先が、王の白くてまろい頬をするりと撫でた。まるで瞬きを忘れたかのように、濃度の異なる赤い視線が絡み合う。
「――――と、このようなものでございますが、ご満足頂けたでしょうか」
先に目を逸らしたのは、師団長の方だった。
不躾すぎる近さを素早く離して距離を置き、にこりと微笑んだ師団長に対し、金の王も一拍遅れてから、にっこりと嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「ありがとうございました、ヴァーリア! 今の行動が壁ドンなのですね。女性に人気だとか、ときめきがどうなどと耳にしていましたが、確かに貴方のような素敵な男性にされたなら、世の女性方はときめいてしまうに違いありません」
「お褒めに与り光栄です、陛下」
いっそ無邪気な様子で喜びを露わにする王に、どうやら師団長はほっとしたらしかった。穏やかさが増した師団長の微笑みに対し、心からの感謝を籠めて、金の王は笑顔で胸を張る。
「これで、先程官吏の方にされたように、民に壁ドンを乞われたとき、過不足なく対応することができます。貴方のお陰です」
満足そうな王の発言に、ヴァーリア師団長の表情が一瞬真顔になる。
「お待ち下さい陛下。その官吏の発言について、詳しくお聞かせ頂けないでしょうか」
「え、あ、はい……?」
数日後、とある官吏が自国の軍服を見かけるたびにびくりと震えるようになってしまったのだが、その原因を誰に問われても頑として答えることはなかったとか。
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