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各国壁ドン事情 銀の国編1
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銀の国の首都、エルデリートの城下街にある市場。常より多くの商人や客によって賑わうことで有名な場所だが、今日はその賑わいに加え、僅かな緊張が張り詰めていた。
それもその筈。今日は、銀の王エルズディ・レード・タリエンデが市井の視察をする日であり、今まさに何人かの臣下を引き連れた王が、城下の街を回っている真っ最中なのである。
普段ならこんなにも近くで拝謁することなどない王の姿に、国民たちは揃って頭を下げ、王が通り過ぎていくまでその敬意を表する。本来ならば、王の姿が見えなくなるまで頭を垂れるべきなのだが、それは王によって禁止されている。
民の暮らしぶりを視察するために来ているのだから、礼など最低限に留め、普段の様子を見せてくれれば良い、ということらしい。
そんな訳で、王が近づいた場所限定で、人の群れが二つに割れて静寂が訪れ、王が通り過ぎれば元の活発な市場の姿に戻っていく、という、傍から見るとかなり怪しい現象が起きている。これはこれで普段の市場とは言い難い光景であったが、王の命を忠実に守ろうとした民の努力の形である。それを理解している王は、自身が示唆したものとは少しズレた方向の努力をしている国民に対し、それ以上の指示をすることはなかった。これもまたいつものことであると判じた王は、奇妙な光景に特別気を払うことはなく、時折店の店主に話しかけたり店先を覗いたりしながら、ゆっくり歩を進めていった。
そんな時だった。
「おうへーかさま!」
ぱたぱたという足音と共に、元気一杯の幼い声が飛び出してきた。
すぐ近くで止まった声の主に王が目を向ければ、そこにいたのはまだ幼い少年だった。精一杯に首を逸らした少年の大きな目が、王を見上げている。
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