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各国壁ドン事情 銀の国編2
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王がすっと周囲に目を配らせると、急な事態に王たちを窺っている人ごみの中にひとり、顔面蒼白のまま片手を挙げ、けれどあまりのことに動くことすらできずに固まっている女性がいた。恐らくは、彼女が少年の母なのだろう。次いで周囲に控えている臣下にちらりと目をやれば、臣下は皆、子供相手にどう対処すべきか迷っているようだった。
臣下たちが迷いを見せたのは僅かな時間だったが、己のすべき行動を定めた臣下が動き始める前に、少年に視線を戻した王が口を開く。
「私に何用か?」
子供にそう問いかけた王に、臣下は戸惑い、国民は戦々恐々とした様子だったが、当事者である少年はぱぁっと顔を明るくした。どうやら、王から声を掛けられたことが嬉しかったようだ。
「おうへーかさま! こんにちは!」
王の問いには答えず、少年は大きな声で挨拶をして頭を下げた。そんな子供に、王は少しばかり目を細める。
「挨拶ができるのは良いことだ。して、何用か、と問うている」
「なによう……?」
言葉の意味が判らないようで首を傾げる少年に、王が言葉を重ねる。
「何か用事があって、話しかけてきたのであろう?」
「あ! はい! おうへーかさまに、かべどんしてほしくて、おねがいしにきました!」
少年がぴっと片手を挙げてそう告げると同時に、周囲の空気が凍りついた。
そもそも銀の国は礼節正しいお国柄だ。民がそうであれば、象徴である王などその筆頭である。黒の王あたりから言わせれば堅物、銀の民から言わせれば公明正大で他者にも自身にも厳しいこの王に、いきなり壁ドンを所望するなど、あまりにも畏れ多すぎる行為である。
ところが、天真爛漫な小さなお子様は、幼いが故にまだその畏れ多さを理解していないようだ。
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