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各国壁ドン事情 銀の国編6
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震える脚で母親が壁の前に到達して振り返ったところで、王が親子に向かってつかつかと歩み寄った。しかし視線の先にいるのは母親ではなく、その腕の中の少年だ。
そのまま母親の横に手を突いた王がぐっと身体を近づけ、少年を見下ろした。はわ……と見上げてくる子供の目を見つめること、二呼吸分。すっと身体を離した王が、少年に言う。
「これで満足か」
王の問いに、暫く呆けた顔をしていた少年は、ぱっと顔を明るくして頷いた。
「はいっ! おうへーかさま! ありがとうございましたっ!」
笑顔の少年に王はひとつ頷くと、では良く励むように、と言って少年の頭を撫で、騎士たちの元へ戻る。そして何事もなかったかのように、再び通りを歩み出した。
王の姿が遠ざかり、喧騒が少しずつ戻っていく中、母親が少年を抱えたままへなへなと座り込む。魂が半ば抜けかけている様子の母に、少年はただ、すごかったねぇ、と楽しそうに笑った。
「おうへーかさま、かっこよかったね! あたま、なでてくれたよ、おかあさん! ぼく、おべんきょう、もっとたくさんがんばって、おうへーかさまのやくにたちたいっ!」
無邪気にはしゃいでそういった少年だったが、そんな我が子に応じるだけの気力が、今の母親にはない。
そんな二人をずっと見守っていた野次馬のどこかで、誰かが呟く。
「……やっぱり、エルズディ王陛下は素晴らしいお方でいらっしゃるなぁ」
その言葉に、周囲の人間がうんうんと頷いたことは言うまでもなく。
ちなみに次回の視察の際、今回の噂を聞きつけた国民(主に怖い者知らずの子供たち)が、こぞって銀の王に壁ドンを求めてくるのだが、一瞬物凄く険しい顔をした銀の王は、しかし一人にやってしまったのならば他にも平等にと、一人一人に壁ドンをして回る羽目になるのだった。
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