アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
各国壁ドン事情 黒の国編2
-
「お仕事サボったらいけないんだよ、ヨアンさま! リューイさまに怒られちゃうよ!」
リューイさまというのは、黒の王のお目付け役として昔から仕えている、リューイ・アッセルという男のことである。他の国で言う宰相に匹敵する立ち位置にいる彼だが、黒の国には宰相と言う役職がないため、もっぱら世話役と呼ばれている。
「えぇ……別にいいよ。世話役、いつも怒ってるから慣れた。それにこの饅頭食べたかったし、仕方ないよ」
少女の忠告をあんまりな言葉でばっさり切り捨てた黒の王に、彼女は驚いた顔をした。
「えぇっ、ヨアンさま、こわくないの? わたし、お母さんに何度怒られてもこわいのに」
「それはあんたが弱いからじゃない? もっと強くなりなよ」
「強くなればお母さんが怒ってもこわくなくなるの?」
「なるんじゃない?」
「じゃあわたし、もっと強くなる! お母さんより!」
「ん、がんばれば」
ズレた助言を受けて奮起する少女を見下ろし、投げやりな頑張れを返した王は、そのままふらりと立ち去ろうとした。が、それを少女に引き止められる。
「あっ、ちょっと待って、ヨアンさま!」
「なに?」
足を止めた王が振り返ると、なんだかきらきらした顔で見上げてくる少女が目に入った。そして彼女は、王の腕をぐいぐいと遠慮なく引っ張り、先程までボールをぶつけていた壁を指差した。
「ねぇヨアンさま、壁ドンやって!」
「かべどん?」
意味が判らないといった風に王が首を傾げると、少女は信じられないものを見たという顔で叫んだ。
「えー! ヨアンさま、壁ドン知らないの!?」
「知らない。興味ない」
「今すごいはやってるんだよ、壁ドン! 黒だけじゃなくて、ほかの国でもはやってるんだって!」
「へー」
心底どうでも良さそうな返事を気にもせず、少女はもう一度、壁ドンをして欲しいとねだった。ヨアンさまにしてもらえたらみんなに自慢できるから、と無邪気な欲を明け透けに言ってくる彼女に、王は再び首を傾げる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
50 / 102