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各国壁ドン事情 黒の国編4
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かくして、哀れな少女はレンガの壁に潰され、見るも無残な死体が……、とは、ならなかった。
「……あれ?」
あまりの事態に目を瞑ることもできなかった少女は、いつの間にか壁と自分との間に割り込み、壁を受け止めている人物がいることに気がついた。
王が投げた壁の勢いは相当のものだったようで、壁を受け止めた人物の足元の地面には、押されて大きくずり下がった跡が刻まれている。
はぁ、と安堵の息を吐き出して壁を地面に置いたのは、茶色の緩い癖毛を三つ編みにした男だった。少女は、この男のことを知っている。
「リューイさま……?」
そう、黒の王の世話役、リューイ・アッセルである。
「あれ、世話役じゃん。何やってんの? サボリ?」
突然の乱入者に驚いた様子もなく、いつものように尋ねてきた王に、世話役のこめかみにびきりと血管が浮いた。
「サボリじゃありません! 貴方と一緒にしないでください! というか、貴方こそ公務をサボって一体何をやっているんですか! なんで壁をぶん投げているんですか! 私が間に合わなかったらどうするつもりだったんですか!」
「ええ、別に……。本気で壁に潰されそうだったら、その前に俺がなんとかしてたよ」
「ああ言えばこう言う! 微動だにしなかった癖に!」
「そりゃだって、世話役より俺の方がよっぽど速いんだから、世話役にとってはあれがギリギリのタイミングでも、俺にとってはまだ様子見できるタイミングだったんだよ」
物凄く腹が立つことを言われた世話役だったが、事実なので言葉を呑み込む。実際この王ならば、本当に少女に壁がぶつかる寸前に助けに入っていたことだろう。
「判りました。それは認めましょう。ですが、なんだってこんな馬鹿な真似をしたんですか! 危ないでしょう!」
「ええ、そんなこと言われても。俺、頼まれたことやっただけだし」
「何を頼まれたって言うんですか!」
「かべどん」
悪びれる様子もなく言われた言葉に、世話役のこめかみにもう一筋血管が浮いた。
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