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各国壁ドン事情 白の国編4
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(……と、いうか……)
よく見なくても、事故の報告書に壁ドンが出てくる原因は、漏れなく各国の王だった。この神官は王の随従として円卓会議の場に赴いたことがあるため、他の国の王の顔やなんとなくの人となりは、漏れなく知っている。癖のある王たちの、それぞれの顔を思い浮かべ、それから神官はひとつ頷いた。
「大司祭様、規制はしなくとも大丈夫ではないでしょうか」
「大丈夫、ですか?」
「ええ。恐らくですが、この壁ドン事件はこれっきりだと思います」
今回の事態は間違いなく王だから起きた特殊事項であり、一度やらかしたからには流石にもう一度はないだろう、と。神官はそう考えた。原因が王であれば、察するに余りあることだった。
そんな神官を、白の王は真っ直ぐな目で見据えた。
「何故、その結論に至ったのでしょうか」
根拠があってのことだろう、と。その問いに、神官は頷いて返す。
「はい。いずれの事故報告も、リィンスタットを除けば起きた場は王宮です。ご自身の膝元で同じ事故を繰り返す王陛下はいらっしゃらないのではないか、と判断致しました」
多分王の暴走が原因だが、二度もやらかす間抜けな王はいないだろう、とは言えず、大体同様の意味を別の言葉にすり替えて伝えれば、王はゆっくりと頷いて、そうですね、と返した。
「いずれの国の王も、民の身の危機に手抜かりはないでしょう。民草が楽しんでいるものを奪うというのも、胸が痛みますしね」
貴重な意見をありがとう、と慈愛に満ちた笑みを向けられ、神官は深く頭を下げた。
答えが見つかって安堵したらしい王が、広げた書類をとんとんと揃え直し、確認済みの束の上に重ねる。神官も自分が使用していた机に戻って、再び書類仕事を始めた。
そこから暫くは、紙をめくる音や何かを書く音だけが執務室に響いた。
「……それはそれとして」
王が不意にぽつりと呟いた。またも書類から顔を上げた神官は、常のように柔らかい微笑みを刷いた王と視線が合う。
「どうしてこうなったのか、次回の円卓会議で皆さんにしっかり確認することにしましょう。状況の把握は重要です。……どういう意図を持っていたのか、ちょっと気になりますしね」
少しばかり悪戯っぽく笑った王に、次回の円卓会議の随従には積極的に立候補しよう、と神官は思った。
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