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そらとぶ とかげ3
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あぐり。大口で呑みこんだ炎がトカゲの中を駆け巡る。この世で一番美味しいご飯にトカゲはうっとりと目を細め、そんな小さな体駆を、身の内から溢れ出るように噴き上げた炎が包みこんだ。
炎は勢いが良いのに、不思議と草土を焼くことなく、ただ轟々と渦巻くばかり。やがてそれが、ぶわりと膨らんで掻き消えると、そこには何倍にも大きい姿になったトカゲがどっしりと座していた。
その大きさと言ったら圧巻で、一般的な騎獣を軽く凌ぐサイズである。この巨体なら、大人が十人は乗れそうだ。
炎が落ち着いたのを見計らって、大きくなったトカゲに近づいた少年は、陽光を弾くなめらかな赤い鱗をそっと撫でた。
「凄いねぇ、ティアくん。これなら本当にすぐだね」
「よし、では向かうとしよう。頼んだぞ、ティア」
トカゲは少年くらいなら丸呑みにできそうな口から、ぼっと火を噴いて答えた。べしりべしりと尻尾が地面を叩く。
少年と男が背に乗ったのを確認してから、トカゲがどたんどたんと走り出した。そうやって十分に助走をしたトカゲは、えいやっと地を蹴った。前足が浮き、後ろ足も浮いて、尻尾までもが地を離れ、風を切ってトカゲは空を飛ぶ。
地を這うことを不満に思ったことはないが、それはそれとして、空を飛ぶことはとても楽しかった。背の上で男が示す先を目指して、水を泳ぐ魚のように、ひゅんひゅんと空を進んでいく。
やがて、向かう先に深い森が見えた。きっとあそこが目的地なのだろう。
ふふ、と背中で少年の笑う声が聞こえる。
「楽しいね、ティアくん」
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