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そらとぶ とかげ5
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近づいてみても少年はごく静かに寝息を立てていたが、じっとその顔を覗き込んでいると、不意にその目蓋がふるりと震えた。
「……てぃあ、くん?」
寝起きのまだぼんやりとした声で、少年が呼ぶ。なぁに、と返事をする代わりにぱたぱたと尻尾を振った。
少年はまだどこか呆けた少し虚ろな目をしていたが、トカゲを認識すると、微笑みを顔に上らせてみせた。
「ふ、ふふ……」
珍しく朝から機嫌が良さそうな少年にトカゲが首を傾げると、少年は小さく笑いながら、あのね、と語りだす。
「ゆめを……見たんだよ」
夢を。ぱちりとトカゲは瞬いた。
「どこか、どこかに……いて、天気がよくって……風が、きもちよかったなあ。僕は何かに寝ころんで、……日を浴びているんだ。それで、ゆっくり運ばれているんだよ」
ゆっくりとした瞬きは、少年に残る眠気を表しているようだった。まだ、夢見心地なのかもしれない。トカゲは傍に寄って、少年の口元をぺちぺちとする。
それにくすぐったそうにしながら、少年が話を続ける。
「僕がねころんでいるものが、動いてるんだ。でもぼくは、ゆめの中でそれを……とうぜんだと思ってて。あったかくって、赤くって……」
言葉を切った少年が、溢れ出るといった様子でころころ笑った。
「ティアくん、なんだよ。ティアくんがね、とっても大きいんだ。僕はそれがふつうだと思ってたから、たぶん、ゆめのティアくんは大きいのがふつうで……ほんとに大きいんだよ。この王宮の、半分くらいはあったんじゃないかなあ……。その背中に乗って……きもちいいねティアくんって、言ったら、いつもみたいに、ぶわって、大きな火を、噴いてて……」
楽しそうに言葉を重ねる少年を前に、トカゲはふるふると震えていた。少年の言葉は既にトカゲの耳には届いていなかった。
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