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クラリオの日常3
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「お前が執務室にいないと聞いてな。どうせ暇なら私と手合せをしろと言いたかったんだが……」
床に積み重ねられている本の山を見たアスカが、肩を竦める。
「どうやら忙しそうだな」
「あー、うん。仕事の方が少し落ち着いたら、この前の続きをしようと思ったんだけど、なかなかうまくいかなくってねー」
はぁ、と大げさな溜息を吐いた王を見て、アメリアも床の本に視線をやった。
「他大陸の言語の辞書に、……異世界の伝聞録、ですか?」
これまた珍しいものを掻き集めたものだ、と思ったアメリアが、再び王を見た。
「この前の続きというと、先日開発してらっしゃった広域大魔法に関連することですよね?」
「広域大魔法……。ああ、この前こいつが無様に気絶したとかいうアレか」
「王様がげーげーしちゃったアレですねぇ? でも私、嘔吐萌え属性はないんですぅ」
残念そうに首を横に振ったフィルミーヌに、アスカが奇異の目を向けた。
「なんの話だ……?」
「王様がげーげーしても嬉しくないって話ですよぉ」
「いや、そりゃ夫が吐いて嬉しい妻はいないだろう……」
「そういうことではなかったんですけど、アスカちゃんのデレを頂いたのでおっけーですぅ!」
謎の会話を繰り広げる二人の王妃はひとまず置いておいて、アメリアは王に更なる問いを投げかけた。
「魔法の開発とこの本の山に、何か関係があるのですか? 魔法書の類なら判りますけれど、辞書や伝聞録がお役に立つものなのでしょうか?」
当然の疑問と言える彼女の問いに、王はあっさり肯定を返してきた。
「寧ろ、魔法書なんかよりも辞書とかの方がよっぽど大事なんだよ。そもそも魔法を発動するだけなら、別に魔法書だとかそんなもんはいらないしね。ほら、思い浮かんだ発想を精霊に伝えて、現象として引き出すだけだからさぁ」
あっさりそう言うが、魔法が使えないアメリアでも、この発言が天才にしか許されないものだということは知っている。相変わらず、見た目からは想像できないほど優秀な魔法師である。
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