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クラリオの日常4
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「まあ人にもよるんだろうけど、俺にとって魔法を開発する上で一番難しい工程って、最後の最後なのよ」
「最後の最後?」
「そう。新しい魔法を考えて、それがどういうものであるかを精霊に伝えて、定着させる。ここまでくりゃあ九割方完成したようなもんで、ここまでは割と得意なんだわ。問題は、最後の一割、……つまり、新たな魔法に名前をつける段階なんだよね」
「……はあ」
真剣な顔をして何を言うのかと思えば、名付けが大変だという話だった。
アメリアと、いつの間にか王の話に耳を傾けていた残りの王妃は、三人とも内心で首を捻った。一体それのどこが大変なのだろうか。
「あー! 三人とも判ってないでしょ! 言っとくけど、めっちゃくちゃ大変なんだからねこれ! 魔法の規模によって変わるけど、半端な名前じゃ精霊は納得してくんないの! そんな名前かっこ悪いからやだーって言われるの!」
「な、なるほど……。……ああ、そうなると、あの広域大魔法の名前をつけるのはさぞ大変なことなのでしょうね」
「そう! そうなの! さっすがアメリアちゃん! あんだけ大規模かつ高威力の魔法となると、そりゃもう風霊ちゃんも火霊もとびっきりの名前じゃないと納得しないんだよ。俺はもう“トル・イッパイフル・カミナーリ”とかで良くねぇかと思ったんだけど、却下されちゃってさぁ……」
そりゃ却下したくもなるだろうよ、とアスカは思った。恐らく、残りの王妃二人もそう思っただろう。
「他にも色々提案したんだけど、どうやらこの大陸で使われてる共通言語じゃ納得しないみたいでさ。なんか、判りやすい名前はダサいから嫌なんだと。俺は使えればなんでも良いと思うんだけど、風霊ちゃんが嫌なのは良くないことだから、頑張って名前探ししてるってわけ。その上、詠唱もかっこいいのじゃないとやだって言い出すから、そっちを考えるのも大変でさぁ……」
ぶちぶちと文句を言い出した王に、フィルミーヌがはいはいと手を挙げた。
「ということはぁ、王様のオリジナル魔法の最初に必ずつく“トル”っていうのも、どこかの言葉なんですかぁ?」
フィルミーヌの問いに、王は頷いた。
「あれはね、異次元にあるどっかの世界で信仰されてるらしい雷神の名前から取ったんだ」
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