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円卓懇親会6
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決意に満ちた目のギルヴィスに、ヴァーリア師団長は目を丸くした。だが、いえそんな、私も、と言い募ろうとする部下を、ギルヴィスは片手で制した。
「挨拶回りくらいならば、私一人でもこなせましょう。なので貴方はお話を続けていてください。グランデル王国の中央騎士団副団長と会話をする機会などそうそうありません。きっと良い知見が得られるでしょう」
ギルヴィスはそう主張して、ヴァーリア師団長の手から挨拶回り用の菓子が入った袋を受け取った。
この師団長が背後に控えていてくれれば確かに安心だろう。しかし、今後いつ何時でも彼が傍にいてくれる訳ではないのだ。一人で立ち向かわねばならない物事が、この先幾らでもあるだろう。それを考えれば、挨拶回りくらい一人でやらねば、と思ったのである。
一方の師団長はまだ何か言いたげな顔をしていたが、そこに赤の王がすっと口を挟んだ。
「ヴァーリア師団長、ギルガルド王もこう言っておられることだし、ミハルトの相手をして貰えないだろうか。貴殿のような優秀な武人が相手ならば、ミハルトも楽しく過ごせることだろう」
その言葉に、ミハルトが笑みを浮かべてヴァーリア師団長を見た。
「陛下の仰る通り、私も前々から貴公とお話したいと思っておりました。もしご迷惑でなければ、お願いできませんか?」
赤の王の意図を汲み取ったミハルトがそう言えば、ヴァーリア師団長はやや困った表情を浮かべ、ちらりと金の王を見た。
「光栄なお話ですが……、」
「大丈夫ですよ、ヴァーリア。そんなに心配しないでください。敵地に赴くわけではないのですから」
「しかし、」
「グランデル王、ありがとうございました。こちらをどうぞお受け取り下さい」
納得がいかない様子の師団長を敢えて無視したギルヴィスが、持参した手土産を赤の王に差し出す。
「ああ、ありがとう」
手土産を受け取ってくれた赤の王に微笑んでから、ギルヴィスは次の目的地を目指して足を踏み出した。
「それでは行って参りますね、ヴァーリア!」
「へ、陛、……いえ。どうぞ、お気をつけて」
意気揚々と去っていくギルヴィスを呼び止めかけ、ヴァーリア師団長は思い留まった。金の王の考えが、なんとなく判ったのだ。王が求めるならば幾らでも力を貸す気がある師団長だが、まだ幼い王がひとりで歩くと奮起しているのを妨げるほど、過保護なつもりはない。
一人離れていく小さな背を見送る師団長は、幼き王の成長を目の当たりにし、少し胸が熱くなった。
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