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円卓懇親会10
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「こんばんは」
ギルヴィスが次に声を掛けたのは、緑の国の王と、その隣国である萌木の国の王だった。
「おや、ギルガルド王、こんばんは」
「こんばんは、ギルガルド王。どうなさいましたか?」
「はい、お二人に改めてご挨拶をと思いまして。若輩の身ではございますが、よろしくお願い致します。それと、よろしければこちらをお召し上がり下さい。西方の島から輸入したマリムというお菓子なのですが……」
先ほどと同じように二人の前に座り、紙袋から菓子を取り出して差し出す。緑の王は直接箱を受け取ってくれたが、萌木の王は手を出さず、代わりに傍に控えていた供回りの男が受け取った。
綺麗に飾られた菓子箱を眺めた緑の王が、こくりと頷く。
「頂きますわ。ありがとうございます」
「はい。お口に合えば良いのですが」
一方の萌木の王は、供回りが持つ菓子箱をしげしげと見てからギルヴィスに視線を投げた。
「ギルガルド王からの差し入れか。毒など盛られてはいないかな?」
「みっ、ミレニクター王!?」
とんでもない発言に、ギルヴィスはぎょっと目を瞠った。
だが、萌木の王は柔らかな笑顔を崩すことなく、変わらぬ様子でギルヴィスを見下ろしている。
そんな萌木の王に混乱しつつも、ギルヴィスはふるふると首を横に振った。
「そのようなこと、しておりません!」
「そうかい? そうだと良いんだけどね」
そう言った萌木の王が、右の掌を上に向けて小さく呪文を唱える。すると、掌の上に土を巻き込んだ小さな水の渦が生まれた。水に踊る土の粒が集まって見る見るうちに形を成していき、最終的にそこには、一羽の小鳥のようなものが現れた。陶器のようなそれは、本物の小鳥のように首を廻らせ、大人しく萌木の王の手の上に収まっている。具現魔法だ。
思わずギルヴィスがそれを注視していると、供回りの男が菓子箱からマリムを一つ取り出し、個包装を破って小鳥の前に差し出した。
「これは毒見用の人形なんだ。ほら、毒の有無なんて、毒見をすれば判る話だから」
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