アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
円卓懇親会11
-
その言葉に、ギルヴィスが小鳥から視線を上げる。その先にあった萌木の王の柔和な笑みに嵌る瞳は、その柔らかさに反して、推し量るような冷たさを宿していた。
ギルヴィスはきっと眦を吊り上げた。発言の意図は判らないが、看過できるものではない。
声を荒げそうになる自分を努めて律し、一呼吸置く。
「私に何か疑わしい部分があったのならば、勘違いさせてしまったことは謝罪致します。しかし、誓って私は何もしておりません。第一に、」
「第一に?」
自分より高い位置にある緑色の瞳を見つめ返し、ギルヴィスは胸を張った。
「本当に貴方を害すつもりならば、自身に疑いが向くような杜撰な真似は致しません。これでも王を務める身。その程度の思考力はあると自負しておりますし、それくらいならば皆さまにもお認め頂いていると思っております。それでも疑うのであれば、貴方の魔法ではなく、今すぐにでも私が毒見を致しましょう」
きっぱりとそこまで言い切って萌木の王の返答を待っていると、ふぅと小さな溜め息が聞こえた。
そちらに目を向ければ、緑の王が僅かに眉をひそめて萌木の王を見ている。
「いつもより、少々趣味の悪い冗談ですわ、ミレニクター王」
静かな口調ながらも、少し呆れたような咎めるような色を含んだ声だった。それを受けた萌木の王は、あはは、と軽い調子で笑って彼女を見た。
「そうかな?」
「ええ。毒見をされるのは一向に構いませんが、わたくしも同じものを受け取っているのですよ? これから口にしようと思っているものの毒を疑われるのは、あまり気分の良いものではありませんわ」
「ああ、それもそうだね。失礼した」
笑ってそう言った萌木の王と、もう一度小さく溜め息を吐いた緑の王を見て、ギルヴィスはぱちぱちと瞬きを繰り返した。
呆然とするギルヴィスに、萌木の王の視線が再び向けられる。
「というわけで、冗談だから、そう深く気にしないでくれるかい?」
「…………驚きました」
思わず緑の王のように零しそうになった溜め息を、ギルヴィスは寸前で呑みこんだ。なんと性質の悪い冗談だろうか。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
87 / 102