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円卓懇親会12
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僅かに肩を落としているギルヴィスを哀れに思ったのかどうか、緑の王が少しだけ優しい声で言う。
「ミレニクター王はそもそも、どんなときも、どんなものにも毒見を行う方ですわ。それこそこの会場においても、すべてのものが、ミレニクター王の口に入る前に毒見を通ることになります。あなたの贈呈品だから、という訳ではないので、あまり気になさらない方が良いでしょう」
「……そうなのですか?」
「そうだとも。僕は昔からずっとそうだよ」
それはつまり、冗談と言いつつ信用している訳でもない、ということではないだろうか。
ギルヴィスはそう思ったが、深く突っ込んで良いのか判別がつかなかったため、大人しく口をつぐんだ。萌木の王は思っていた以上にとてもお茶目な方であるらしい、と少しオブラートに包んだ認識に改めつつ、ギルヴィスは二人にぺこりと頭を下げる。なんだか少し疲れたような気がした。
「それでは私はこのあたりで。失礼致します」
「うん、それじゃあね」
「……ミゼルティア王の元へはもう行きましたか?」
にこりと挨拶を返してきた萌木の王とは違い、緑の王は唐突に問いを投げかけてきた。不思議に思いつつ、素直に首を横に振る。
「いえ、これからです」
「そうですか。でしたら、次は彼の元へ向かうのが良いと思いますわ。……早くしないと、目的を果たせなくなってしまうかもしれませんもの」
「えっと……? は、はい、判りました」
理由はいまいち判らないが、青の王の元へは早く向かった方が良いらしい。
謎の忠告に内心首を傾げつつも、それならばとギルヴィスは次の行き先を決めた。
「それでは、ご機嫌よう」
「はい、失礼致します、カスィーミレウ王、ミレニクター王」
もう一度頭を下げ、ギルヴィスは立ち上がると、二人の元を離れていった。
そんな小さな後姿を眺めつつ、萌木の王がぽつりと零す。
「いやしかし、良かったよ。彼があそこで、『私がそのようなことをするように思えますか』とか言い出さなくて。ろくに知りもしない彼にそんなことを言われても、どう反応を返せばいいか判らなくなってしまうから」
頼りないしまだまだ不出来だけど、彼も一応王様のようだ。
感情の読めない目でそう言った萌木の王をちらりと見て、ふぅ、と緑の王が目を伏せる。
「ミレニクター王、あなたの意見にはわたくしも同感ですが……腹底の黒が漏れ出ていらっしゃいますわよ」
「おやおや、これは失敬」
にこりと笑いながら、作り出した小鳥にマリムを一口ずつ啄ばませている腹黒に、緑の王は僅かに呆れたような目を向け、同じようにマリムを口にした。
当然、毒など入っていなかった。
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