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円卓懇親会19
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何とか無事に修羅場から逃れたギルヴィスは、きょろりと周囲を見回した。挨拶をしていない王はあと三人だ。彼らはどこにいるだろうかと探してみれば、残りの三人が固まっているのが見え、そちらに足を運ぶ。
残りの色は、白、黒、銀。特に最後が、最難関の相手である。何せ金と銀は、あらゆる気性が真反対だ。
リアンジュナイルの歴史において最も新しい金と、始まりの四大国に次いで建国された銀。新しきを尊び、大陸外にも広く国を開く金と、連綿と続く歴史を重んじ、伝統を尊ぶ保守派の銀。当代の王に関しても、王の中で最も若く経験の浅い若輩の金と、最も高齢で王としての経験を重ねてきた熟練の銀。気が合う気がしないし、事実気は合わないのだろう。
銀の王は供回りの騎士を背後に控えさせ、静かに料理を口にしていた。白の王はその近くで時折自分の供回りと会話をしつつ、会場全体を眺めながら喉を潤している。黒の王は、積まれた空き皿の横で黙々と目の前の皿に向かっていた。料理を平らげているようだ。
「エルキディタータリエンデ王」
どもりそうになるのをなんとか耐え、銀の王に声をかけると、濃い色の瞳がすいとギルヴィスに向けられた。よく研いだ刃の切っ先のような、鋭利な視線だ。思わず怯みそうになる自分を叱咤し、ギルヴィスは一礼をしてから銀の王の近くに座った。
銀の王は青の国のものらしき魚料理を食べていた手を止め、食器を置くと静かに口を開いた。
「何用か」
「この懇親会には初めて参加させて頂きましたので、挨拶回りをさせて頂いております。エルキディタータリエンデ王、私は未だ若輩の身ではございますが、これからも研鑽を積み重ね続け、より良き王を目指していく所存です。未熟な点が目につくこともあるかと存じますが、どうかご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます」
そう言って深く頭を下げたギルヴィスを見て、銀の王が目を細めた。
「王が軽々しく頭を下げるものではない」
冷たい一言に、ギルヴィスは慌てて顔を上げた。
「も、申し訳ございません」
「理解したなら良い」
そう言って食事を再開しようとした銀の王に、ギルヴィスが再度声を掛け、菓子箱を差し出す。
「あの、よろしければ、お召し上がり下さい。西方の空に浮かぶ島より取り寄せたもので、」
「要らぬ」
最後まで言い切る間もなくばっさり切り捨てられ、ギルヴィスは思わず口をつぐんだ。
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