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2022年2月11日
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不思議なことに、雪が降ると気持ちが浮き立つ。
もちろん、交通機関が麻痺したり、滑って怪我をする人もいるから、諸手(もろて)を上げて歓迎とはいえないのは大人の事情だけど。
小夜はベランダに積もった雪を見て微笑んだ。
「・・・どうした?」
「うん。」
建国記念日の今日は、小夜が通うこども園はお休みだ。
「こどもたちが喜んでるだろうなって。」
「ああ、・・・そうだな。」
空は灰色だ。
まだ晴れ間はのぞいていないが、10時ごろからは晴天になると予報が出ていた。
気温があがるため、このベランダに積もった雪も消えてしまうだろう。
「雪だるま、つくるか。」
風見の言葉に、小夜は破顔した。
「うん!」
積もった雪は、大きな雪だるまを作るほどの量ではない。
手乗りサイズの可愛いものを作るしかないだろう。
それでも、ふたりで作ることに意味があった。
「目って黒胡椒でいいかな?」
「お、良いね!」
小夜の創作用にとっておいたリボンをマフラーに。
ペットボトルのキャップは帽子に。
材料を揃えて、ふたりはベランダに出た。
手すりに積もった雪を素手で触ると、凍えそうな冷たさにふたりで笑った。
「雪ってこんなに冷たかったっけ。」
「もう忘れてたよね。」
しゃがんで、くるくるとお団子を作る要領で4つ玉を作った。
指先がジンジンと痺れる感じが懐かしくて、小夜は赤くなった指先を見つめた。
「ん、冷たい?」
「うん、冬を満喫してる。」
小夜の言葉に、風見が微笑んだ。
「だな。冬って感じだ。」
玉を重ねて、飾っていく。
2つの雪だるまは、自然と寄り添うように作られた。
「さ、生命を吹き込むぞ。」
「ふふ。」
風見が黒胡椒の目をギュッと雪だるまに押し付けた。
小夜の予想した目の位置と違って、それも何だか楽しかった。
「小夜も。」
「うん。」
そっと黒胡椒を埋め込んで、2つの雪だるまにリボンを掛けた。
「・・・可愛いな。」
「うん。」
ちんまりとした雪だるまは、仲良く並んでとても可愛らしい。
仕上げにペットボトルの蓋で帽子を被せると、小夜は風見の横顔を見つめた。
「・・・ん、どうした?」
「幸せだなって。」
そう小夜が言うと、風見は小夜を抱き寄せた。
「俺もだよ。」
凍えた手を互いに握りしめて、冷たくなった鼻をくっつけた。
「・・・カフェオレ作ろっか?」
「カフェオレも良いけど、小夜が食べたいな。」
風見の大きな口が噛み付くように小夜の唇を塞いだ。
「んっ・・・ん、ぅ。」
すぐに火が灯る体を、小夜は風見の体に押し付けた。
「・・・すき。」
「俺も。」
ガラスの向こうは、暖房の効いた暖かい部屋だ。
そしてそこで、愛を確かめる。
幸せな、朝。
二つの雪だるまは絆を確かめるように寄り添いながら、ガラスの向こうに消えたふたりを見ていた。
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