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男はそう言い残し部屋を後にする。
少し緊張感から解放されてベッドに横になる。
新品の白いシーツには赤い点がちらほら咲いている。落とされたミルクティーも染みてしまった。
ふと頭上の壁に目をやると大きく書かれた文字がある。
暗くてなんと書いてあるのかはわからない。
結局後ろで結ばれた手も解くのを忘れられてしまう。
身体を起こして部屋の中を散策する。
アナログのTVがずっと砂嵐を巻き上げている。
もう何も映らないのなら消してしまってもいいだろうに。
寝室にしては広いが、不思議な物ばかり置かれている。
床はよく掃除されているのに対して使えないTVを付けっぱなしにしていたり、切れかかっている白熱灯もそのまま。
香水やメイク道具が綺麗に並べられている。
大きなリボンが並べられていて何に使うのだろうかと疑問を抱く。
棚には本が閉まってあり、1番下には工具箱のような物が置いてある。中身が気になる。
なんとか足で開けられないかと試行錯誤するがそう簡単には行かなかった。
テーブルにはティーポットとティーカップが2つ。何本もの吸い殻が貯められた灰皿。
恐らくフェイクだろうが有名なピカソの絵画が大きく飾られているが上下反対ではないだろうか。
この部屋から読み取れる情報はそんなものだろう。
相手は几帳面かつ大胆な思考を持っていると思う。でなければこの部屋の違和感に説明がつかない。
一見落ち着いた雰囲気だと思えば急に狂ったようにスイッチが入る。
そしてこの古い屋敷の下に飾られた遺体の数が計り知れない。何人もの人を殺めたのだろうか。
ここはアトリエと言っていたのをふと思い出す。
用が済んだらこの屋敷から出て行くのでは?と窓を探すが見当たらない。その辺にあった身を包めそうな布を足と口を器用に使って何とか布に身を包めた。時間はかかった。
恐る恐る部屋のドアを開けようと体を使って押すと意外にも開いてしまう。
エントランスが天井窓から漏れる月の明かりで密かに照らされ、今が夜だとわかる。
とりあえず窓を探しに散策するが暗いせいでたまに物質との距離感が掴めずぶつかってしまう。
迷子になりそうだがここまで来たら引き下がるわけにもゆくまいと深い暗闇に吸い込まれるように進んだ。
どんどん月の光は遠くなりダークサイドに堕ちていく。
すると、扉と階段がある。まずは目の前の扉を開けた。
その辺にライトがないかと探る。
足元にコロコロと転がってきた細いペンライトを口で拾ってスイッチも押し込み式だったので簡単に明かりを付けれた。
薬品庫だろうか。見たこともないような薬品が肩を並べている。台の上にライトを当てるとやや緑色に変色した脚が転がっていた。普通なら異臭がするとは思うが何か特殊な加工でも施してあるのだろうか。特に変わった臭いはしなかった。
薬品庫を後にし、螺旋状の階段を登って行く。
3つくらい部屋があり、右端の部屋から見ることにした。
この部屋は使っていないのだろうか。何もない。
真ん中の部屋は衣類が置かれている。
女性用のドレスやアクセサリーなどが綺麗に並べられている。それぞれにネームタグが付けられていて推測するに生前の女性が身につけていた物だろう。しかし、なぜみんなドレスなのだ。普段から着る機会もあまりないだろうに。
謎を残したまま左端の部屋に入ろうとする。
なんだか寒気がする。
ここに入ってはいけないような気がする。しかし、ここまできたら後には引けない。あんなモノまで見せられたんだから今更怖気づくこともないだろうと部屋に入る。
やはり後悔した。部屋には十字架にかけられた遺体があった。下半身がなぜだか逆向きだ。
彼女の血で書かれたのだろうか。
英語で何か書いてある。英語は苦手だが読み取れない文ではないので解読する。
-美しき我妻に捧げる-
ひょっとしてこの人はあの男の配偶者ではないのだろうか。
結局窓は見当たらず部屋を後にして階段を降りていく。
エントランスの中心には月明かりに照らされたロマンスグレーの髪が怪しく光っていた。
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