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結局起きたのは昼下がりだった。
腰が重く痛む。
今日もまた窓を眺める。
曇天だ。晴れるか雨が降るかどちらに天秤が傾くだろうか。
「今日は曇ってるね。雨が降りそうだ。」
k「さぁ、どうでしょうね。」
「また敬語?」
k「….まぁ…基本は…。」
「なるほどね。なかなか良かったんだけどね。昨日の感じ。」
k「…。」
恥ずかしさに目が合わせられず顔ごと逸らす。
今夜が決戦だというのにどういう心境なのだろうか。
「夜が楽しみだね。」
k「楽しみではありませんよ。命かけてるんだから。」
「そうか。あの部屋にはあれから行ったのかな?」
k「…十字架の?」
「そう。あの部屋。」
k「入ってません。」
「紙の切れ端に数字を書いていた紙を置いていたんだ。見覚えあるだろう。」
k「あぁ。あれは入ってしまった時に見ましたよ。」
「あの数字解読できた?」
k「何の数字かわかりませんてましたが、恐らく何かの座標じゃないかと思ってました。」
「半分正解。あれはこの屋敷の周辺の座標なんだ。あの座標から半径100km外のどこかに屋敷があるということ。今朝この座標が警察に届いている。」
k「…え?…なんで…?」
「今日が君か私が終わる日だからね。まぁ、それはそれとして食事にしよう。どちらかのラストミールになるからね。何が食べたい?」
k「…牛タン、辛いモノ、キャベツ、オムライスそれから」「待った。そんなに出せないよ。」
男は苦笑いする。
k「じゃあ牛タンとオムライスとピリ辛の炒飯。」
「妥協してそれか…。時間かかるけど待ってられるかな?」
k「待ってます。」
「全く…子供みたいだな。」
k「お願いします。」
「なんで君が不貞腐れてるんだ…。」
こういう時じゃないとこの男を困らせる優越感には浸れないから内心は笑っていてもっと困らせてやりたいとも思う。これもラストミールのうちにしておこう。
座ってるだけじゃなんとなく悪いので少し手伝うことにする。
「包丁をそんな持ち方するんじゃない。こうやって切るんだ。」
k「ほう。こうか…。」
「お料理教室みたいだな…。」
色々と教えてもらいながらやってみるが上手くはできない。男は困ったように笑って忙しそうにしている。
悪いが俺には困らせることしかできなさそうだ。
自覚しながらも指示を待つ。
フライパンの煽り方まで教えてくれた。
男が後ろから一緒にフライパンを握ってくれている。
k「なんか変な感じ。」
「何が?」
「普通にしてたらなんか…こう…その気はないけど恋人感すごいなと思って…」
「私が望んだ日常だからね。そうなる仕組みだよ。だからみんな私を恋人のように慕って作品になっていく。私が相手にした女性はなぜか私に求めてくる。紳士的で素敵な私をね。それに答えてるだけで素直になるものさ。」
k「男の俺から見ても見た目とかは申し分なく整ってますしね。」
「まぁ、外見には正直恵まれたがね。もう52なんだけどね。」
k「52でそんなに整ってるなんて…スペックも高いし羨ましいです。俺が女だったらきっと好きになってるくらいだな。男で良かった。」
「私も君は男の子で良かったと思うよ。じゃなきゃ男に良いようにされてしまいそうだ。」
k「…どういう意味だよ…。」
穏やかな会話が続く。
次々と注文した料理が並べられる。
お互いに食べたいものが別々だったので時間は物凄くかかった。
k「うまっ。俺天才かも。」
「微笑ましいな。全く。」
呆れた顔で俺を見つめる。
気にせず出されたモノを食べ続ける。
ふと男の食事メニューを見る。
鴨肉、フライドポテト、ポップコーン、ドーナツ、チョコレート、オリーブ3粒、チョコミントのアイス、珈琲、タバコ。
かなりの偏食ぶりにどこか異常性を感じる。
「何か?」
k「いや…変わった組み合わせだなと…。」
「私はいつだって求めてる物を食べる。似たような話をしたと思うが。」
k「あんま覚えてないな…。ポテト少しください。」
差し出されたポテトを口に咥えてそのまま食べた。
k「今何時くらいですか?」
「もう夕方だよ。」
無い時計がカチカチと音を立てる。
もうすぐどちらかが終わりを迎える。
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