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mbky32 ※
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k「はぁ、はぁ…マジ…やべぇ…。」
そろそろ集中力が限界を迎える。
一体どのくらい時間がたったのだろうか。
睡魔が襲ってくる。
持久戦の辛さを思い知らされる。
運動神経には自信はあるがそれとこれとは別だった。
一手でも間違えれば死ぬ。
近くで発砲音が鳴る。
こちらまでもう来ているのか。
まずい。切り札を急いで用意して隠れる。
扉の後ろに隠れる。ベタだがこの部屋で隠れるところがそこしかない。
ゆっくりと扉が開く。
腹を括る。
「匂いがする。この部屋にいるね。」
非常に嗅覚が良いらしい。
いや、もしかしたら当てずっぽうで全ての部屋に入る度に言っているのかも。どちらかわからない。
「エレナ。教えてくれるかい?ここにあの子は来たかな?」
奥さんの名前だろうか。急に何かに話しかける。
やはり奥さんの遺体に話しかけているのだろうか。
「扉の後ろ。」
k「!」
声にならない声が一瞬漏れた。
出て行くしかない。今か今かと慎重にタイミングを伺う。
「早く出ておいで。終わりにしよう。」
k「ど、どうも…。」
「やけに素直だね。諦めたのかい?」
k「いや、俺に触れるまではまだ続いてますよね?」
「鬼ごっこだからね。」
k「これ。お借りした物です。」
持っていたジッポと引火性のある薬品を掲げる。
「…何の真似かな?」
k「俺の最後の切り札です。エレナさんですか?流石にもう火葬して上げた方がいいのではないかと」
「今すぐそれを置け。今すぐだ!!!」
聞いたこともない怒声に怖気付きそうになる。
震えながらもこれしかないとジッポに火を灯す。
赤くゆらゆらと揺れる炎が笑っているように見える。
「やめろ!!!!!」
k「エレナさん。安らかに。」
薬品をばら撒いて炎の灯ったジッポをそこに投げ捨てる。
化け物のように炎が大きくなる。
「っ、貴様ぁああ!!!!」
振り回されるサバイバルナイフを必死に避ける。
背を向けて全速力で階段の手すりを滑り降りるのよりも少し早く小さな斧が飛んできて脚に刺さる。
k「うあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!!!!」
あまりの痛さにバランスを崩し階段からすべり落ちて行く。投げ物まで持っていたとは思わなかった。
衝撃でどこもかしこも痛い。しかしそんな痛みにも構ってられず斧を抜いて脚を引き摺りながらエントランスに向かう。
k「はっ、うぅっ〜〜〜〜っ、クソ…」
痛みのせいか瞬きを忘れた瞳からボロボロと涙が溢れてくる。ヘンゼルとグレーテルがパンクズを落とすように流れる血が道標を作る。
歩いていると更に脚に鋭い痛みが走り、見るとガラスが刺さっていた。まさかと上を見上げると天井窓から落ちた僅かな破片が偶然刺さってしまったようだ。
k「ひっ、!くそっ、まだ…死んでたまるか…」
「まだそこにいたのか。もうそろそろ」
外の騒がしさに男が気付いて動きが止まる。
出口の方がドンドンと叩かれてる。外側から。
男は目を見開いて口角を上げていく。
ヘリコプターや車の音が外から漏れ出している。
木でできた扉が破壊されぞろぞろと警察が流れ込んでくる。
「警察だ!!手を上げろ!!!」
「これはこれは…大勢の観客だ。ようこそ。やっとお会いできて光栄です。」
男は手を上げない。俺の方に歩み寄ってくる。
「止まれ!!!」
無視して男はこちらに来て俺のところに来る。
警察の怒鳴り声がたくさん聞こえてくるが、耳に入ってこない。
男は俺に口付けをし、耳元で囁いた。
「おめでとう。君の勝ちだ。」
男は立ち上がって警察に言う。
「娘さんとよく似てますね。」
「…娘のことを知ってるのか…??」
「大変よく…。とても我儘で単純で大人というだけで勝手にブランドのように扱われましたよ。随分とお若いのにこんな私に歩み寄るなんて。」
「…あ….お前…」
「地下で眠っていますよ。後で観にいくことをお勧めします。」
「生きているのか?!娘は?!」
「ええ。とても綺麗ですよ。美術品のように。鍵はそこに座り込んでる少年に託しました。案内してもらってください。」
「お前は一体何なんだ….?」
「私は芸術家です。早くしないとこの屋敷ごと燃えてしまいますよ。それでは皆さまお楽しみください。キヨ君…だったかな?これが私の用意していたエンディングだ。」
k「え?」
男はこめかみに所持していた銃口を当てる。
k「ま、まって」
「愛してる。」
屋敷内に1発の銃声が響き渡る。
男は倒れて、全員が言葉を失った。
1人の警官が駆け寄ってきて男の生死を確認しに来る。
男と会話をしていた警官が俺の方に駆け寄ってくる。
「署までよろしいですか?お伺いしたいことがたくさんあります。…それから地下というのはどちらにありますか?!」
k「あ、あの…観ない方がいいです…。地下の鍵なんてないです…。」
「こちらに地下への階段がありました!!」
遠くから1人の警官が叫ぶ。
すぐさま男と話していた警官は走っていく。
気が緩んでそのまま目が閉じていく。
薄れる意識の中に遠くから悲痛の叫びが聞こえてきた。
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