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1 平凡な世界
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目の前に真っ新な青が広がる。
潮風と混じって香る緑の少し独特な匂い。
チカチカと手のひらから漏れる太陽の光。
サァッと僕の頬をすり抜ける風。
全てぜんぶ、溶け込んでいく。
……僕の唯一の楽しみ。
僕、一ノ瀬 碧(イチノセ アオ)は昼休みに教室を抜け出し屋上に来ている。
そして、目の前に広がる青空にむらってシャッターを切る。
…うん、やっぱり良い。
光の反射でよく見えない画面を目を細めてみる。
意味のない話を聞くより絶対こっちの方がいい。
大の字になって寝転び、太陽の光を浴びるように目を閉じた。
ここに引っ越して来てからもう1週間が経とうとしている。
転校生してからクラスのみんなに質問攻めされて参ってしまい、休み時間になるとこうして1人になれるところを探していた。
まさかこんな良いところがあるなんて。
みんなには申し訳ないけど、やっぱりこの感じがなんだかすごく好きでやめられない。
昔からカメラを持って出かけるのが好きだった。
幼い頃、母の趣味だったカメラで両親を撮った写真を父に見せた。
上手だなと褒められた高揚感が今でも忘れられなくて、それからずっと自分が気に入ったものを撮り続けている。
母から譲り受けたこのニコンのカメラをぎゅっと抱きしめ、夢の中へと落ちていった。
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