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少年とセジェスタ(1)
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木陰に座り体を休めるカレン、地上ではセジェスタと呼ばれている。セジェスタの頭上に人の影がふわりと覗く。閉じていたまぶたを持ち上げ顔をもたげた。感じた人影に殺気や悪意はない。流れる風に乗る匂いは見知った少年の匂い。
「ジェス!一応報告終わったぜ」
眩しい笑顔を覗かせ親しげに呼ぶいくつ下かも分からない少年。栗色の髪が印象的で歳の割には低い身長がより幼く見える。
地上の防衛軍として配属されひょんな事から俺と会ってしまった可哀想な少年。魔界の残党に絡まれているのを助けてから懐かれ、こちらも目くらましに丁度いいと一緒に行動し始めたのが初めの出会い。
「ああ、お疲れ様隊長、もう少し待ってくれないか」
「分かった、今日は無理させたよな…ありがとう、でもその隊長はやめてくれよ」
今では軽口を叩くほど親睦が深まりもうただの利用するだけでない、いい仲間となっている。
今彼が済ました報告は魔界から湧いて出てきた出入り口を見つけ塞ぎ、こぼれた瘴気を回収したものである。
思いのほか残党が湧いて少々怪我を負ったセジェスタは報告に行く少年にはついて行かず、近くの木陰で休んでいた。
「……さっき片付けた奴らの中に父親の使いの者がいてな」
少年はセジェスタの隣に腰掛けると腰にかけていた荷物を下ろした。それを横目にセジェスタは先程の作業中にあったことを少年に伝える。
「使い?」
「ああ、俺に伝言を伝えに送られたんだと言っていた。1度顔を見せに来いってな」
「それで魔界の口が空いたのか……とんだ迷惑な親父だな」
セジェスタの父親は魔界の1区画を統制する悪魔で魔界と地上とを繋ぐ出入り口を作り出すことが可能である。本人はくぐることが出来ないが、人でも散らせる雑魚はどうしても紛れて入ってくる。
「……行こうかどうか迷うんだ」
「別に行ってこればいいだろ、何か問題でもあるのか?」
「お前を1人で置いていくのがな」
セジェスタは父からの誘いに迷っていた。それは少年を1人にして置いていってしまうこと、実際はなんの力もない、まあ一般人よりは喧嘩が強いくらいの少年。心配である。しかし、セジェスタを引き止めるのはそれだけじゃない。その会いに行く場所と父親に問題があるのだ。
「そんな心配……するよな……でもお前がいないって分かったらアヤちゃん飛んで来そうだけど」
「確かにそうだな……まあ、行きたくないって思ったところで勝手に連れてかれるが」
「やっぱお前の親父はとんだ迷惑親父だよ」
少年の言うアヤちゃんとは少し前に一緒に行動していたエルフの民の女性である。人嫌いなエルフだが、少年の人の良さと信頼の強さから何かあれば力を貸すと言ってくれたのである。彼女は腕の立つ戦士でやや荒っぽいとこはあるが、少年に何かあればすぐにすっ飛んでくる心強い者だ。
「そうだな、一応鳩を飛ばしておこう」
「ジェス悪いな、俺がもっとちゃんとしてればお前もそんなこと気にしなくていいのにな」
木陰は程よく暖かい風を運び吹き抜けていく。
セジェスタはどうせ強制連行されるのに、と少年に愚痴のような引き止めて欲しいような感嘆を吐くとやっと塞がり始めた傷口を撫でる。
「それ、怒られそうだな」
「間違いない……自分のせいだと言ってやりたいよ」
少年はゆっくり流れる時間に身を任せ、セジェスタが動きたいと思うまで傍で静かに寄り添う。
セジェスタも嫌な顔一つしない少年にまたまぶたを閉じ待っていてもらう。やっと訪れた平和な時間だが、すぐに奪われるのは使命なのか何なのか。傷の回復魔法もそこそこに眠りにつく。
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