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最上階の喧騒
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半ば引き摺られる様に連れていかれたのは部屋の奥に用意された大浴場で、こんな場所があったのかとカレンは驚く。しかもその中に満ちているのは黒く粘稠感のありそうな液体で、室内が暖かいからそれもある程度温度があるんだろうと思われる。どことなく不気味な空間にカレンは後退り目を泳がせる。
「お父様、ここは」
不安な視線を寄越すカレンにベリアルはなんてことは無いと、その場にカレンを残して足を進めた。
「カレンは来たことがなかったか、ここは私が作り出した特別な場所だ入れば分かる」
足を進めるベリアルはその浴槽の縁まで歩みを進めるとその液体の中に進んで行った。階段を降りるような仕草と順に浸かっていく姿を見るに結構な水深があると見える。
「さあカレン、来なさい」
カレンは言われるがままゆっくりと歩みを進める。父は偉大な悪魔で一国を纏めあげる確かな人物だ、恐れると言う感情は持っていないから分からないだろうが未知のものに触れるのは大体恐ろしい。手を招かれるがままその液体に歩みを進める。急かす訳ではなく静かに待つ父の気長さには感謝するが正直向き直って走り去ってしまいたかった。それほどにここは酷く恐ろしく感じるのだ。
それでも進めた足はもう縁までたどり着いてしまった。
意を決しカレンは歩みを進める。
その液体は温かく、入れた足に登るようにまとわりついてきたのだ。まるで取り入れて食われてしまうんでは無いかと思わせるように。
そこで一瞬怯んだせいか、縁に残した足を滑らせ瞬く間にその液体の中に向かい入れられてしまった。
それでも足が直ぐに着くだろうと掻い潜った矢先、先に入れた足が下に着く気配が全くないのだ。
焦ったがもう遅い、足裏が何かに触れることはなくまるで巻き込まれるように頭の先まで液体の中に引き込まれて行ったのだ。
「お、お父様!!」
別に泳げないわけでない、人並みに泳げるはずなのに何故か体が言うこと聞かない。まるで何かに足を掴まれているように感じる。最後に見た父の顔は笑っていた。口に中に入ってくる粘度のある液体にムセ、全く浮かない体にどうしていいか分からず藻掻く。
「……カレン、落ち着きなさい」
急に何かに腕を掴まれて上の方に持ち上げられる。切れる息にムセ込み一瞬何が起こってるか理解出来ず遅れて父が引き上げてくれたのだと理解する。
「ゲホッ……ウッ、お父様……ありがとう、ございます」
「いい顔になったな」
ベリアルは引き上げたカレンを引き寄せ腕に収める。そして顔を覗くといい顔になったと笑みを浮かべた。
窒息の恐怖感ともがいた事で切れた息を整えようとするカレンの瞳は、色が反転し白目の部分が父と同じように黒に変化していた。口内に覗く八重歯も変化し牙と言うように長くなっている。
「やはりお前はこうでなければ……その方がここで生きやすいだろう」
ベリアルはカレン顔を撫で、愛おしそうにその体を包み込む。カレンの姿はそれでも長く続くものでは無い、彼が帰る頃には毒が抜けて地上に引き戻されるであろう。
「ッ……お父様、私に何を」
「心配することは無い、1週間もせずに戻っていく筈だ」
カレンは少し落ち着き始め、不安定な足場の代わりにベリアルの腕に縋る。
「これで気は済んだだろ?さあ、戻るぞ」
ベリアルはカレンを抱き上げるとまた階段を上がるようにそこから出る。体に纏わる黒い液体は出ていく瞬間カレンの服も変えていき、魔界の正装に変わっていく。この黒い液体は少なからずベリアル自身の魔力が含まれており、ある程度好きに動かすことが可能なのであろう。だから自身は沈まないし濡れない、服のような簡易な物であれば再構築も可能なのであろう。
そしてベリアルは元の部屋へと戻って行った。
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