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第二章
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─────あれは俺じゃねぇっ!俺は認めねぇっ!!
男なんかに組み敷かれるだけでも、腸が煮え繰り返る程に腹が立つというのに、自分から求めてしまった事実が恥ずかしい。
あの男を殺してやりたい程の怒りと同時に、何も抵抗出来ずに、いいようにされてしまった自分自身にも怒りが湧いてくる。
迅鵺は乱暴にベッドから立ち上がって、シャワーを浴びようとバスルームへ行こうとした。
けれど、初めてだった上にあんなにも激しすぎる行為のせいで、迅鵺の体は悲鳴をあげているようだった。
怒りのせいで急に勢い良く動いたものだから、迅鵺は力の入らない膝から震えるように崩れて、固いフローリングの床に膝と手を着いてしまう。
悔しさと虚しさを呑み込んで立ち上がると、今度は壁に手を付きながら、ヨロヨロと心許ない足取りでバスルームまで歩いていった。
「─────っ!?」
脱衣場にある洗面鏡の前に立った迅鵺は、鏡に映る自分の姿に絶句している。
肩や二の腕、首元や乳首にまでくっきりとした歯形が付いていて、迅鵺の透き通るような白い肌には所々、赤い痣が浮かんでいる。
そして、首にはあの男の締め付けた手の痕が赤紫色になって付いていたのだ。
「────これ、ヤベェだろ・・」
迅鵺は自分の首元に手を当てて震える声で呟いた。
それにしても、アイツは幽霊なんだろ?それなのに、なんでこんなに痕跡残せるんだよっ・・そもそも、なんで触れんだ?それどころか・・
その後の事は、考えたくもない。そう言いたげに首を振ってあることをハッと思い出す。
「そういえばアイツ、唇から血を垂らしたよなっ!?」
シャワーを浴びにきたのに慌てて引き返すと、ベッドの上を確認する。
けれど、血の痕は何処にも見当たらなかった。
それに、不可解な事は他にも沢山ある。
迅鵺の名前を知っていたし、あのストーカーの事も結局は何も分かっていない。
迅鵺は、改めて自分の身に起こった事を整理すると、心身共に震わせて恐怖の色をその顔に表した。
「俺が──・・何したってんだよっ・・」
ベッドを背凭れにして地べたに座り込んだ迅鵺は、溜め息を吐きながら項垂れた。
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