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第五章
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「ガハッ!ゲホッゲホッ───」
喉が切れ血が出る程までに咳き込み、苦悶の表情を浮かべる迅鵺。
すかさず響弥は駆け寄って背中を擦る。
「迅鵺っ!!大丈夫かっ!?息は出来るかっ!?」
迅鵺の首には、悠叶の手の跡がくっきりと残っていて、首から上に酸素が回らなくなっていた迅鵺の顔は熱を持ち真っ赤になっていたが、だんだんと赤から蒼白く変わってくる。
響弥の声は聞こえてはいるが、返事をする余裕はなかった。
そんな迅鵺の様子に、響弥は血の気が引く思いで震える手を必死に押さえながらスマホを手に持つ。
けれど、迅鵺は咳き込みながらも響弥のスマホを持つ手を制した。
「────迅鵺・・」
響弥は、ハッとして迅鵺を見ると苦しそうに涙を浮かべながらも首を振っていた。
“救急車は呼ばないで下さい”
言葉にしなくても、迅鵺の性格を考えれば響弥にとってそう受け取る事は容易であった。
迅鵺の気持ちを汲んで響弥は“わかった”と伝えると迅鵺の背中を落ち着くまで擦り続けた。
暫くして、怠くふらつく体を響弥に支えられながら立ち上がると、未だに響弥に投げ飛ばされた体勢で放心状態のままの悠叶の前に立ち、迅鵺は静かに口を開く。
「────悠叶さん・・俺は信じてました・・悠叶さんは悪い人なんかじゃなくて、本当に良い人なんだって・・・」
「けど、悠叶さんは・・最初から俺に、こんな事をするつもりだったって事っすか?」
何も言わない悠叶に、怒りが湧いてくる。
けれど、それ以上に迅鵺は悲しかった。せめて、何か納得出来る事情とか何でもいいから否定してくれる事を願った。
しかし、この沈黙が答えなのかと迅鵺は受け取る。
「────もう、ここには来ないで下さい。」
色んな感情がぐちゃぐちゃに混ざり合っていて、この状況を理解しきれてはいない。
迅鵺は震える声で伝えると、悠叶を置いて響弥とその場から離れていった。
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