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第六章
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「──────・・」
迅鵺は、静かに目を覚ました。迅鵺の瞳からは涙が流れていて、そっと自分の頬へ指先を当てる。
「なんでっ・・俺、泣いてんの?悠叶さんも、泣いてた・・すっげぇ苦しそうに・・・」
悠叶の泣いている姿が脳から離れない。迅鵺は右手を頭に持っていくと、くしゃっと髪の毛を握った。
「一体何をあんなに苦しんでたんだ?」
どんなに考えても迅鵺に分かる筈もない。悠叶は、迅鵺が本当に聞きたかったことはひとつも教えてはくれなかった。
毎週会いに来る理由も、自分を好きだと言う理由も、殺そうとした理由も・・・涙の理由も。
あの日、全てをハッキリさせたくて悠叶を誘ったのに、結局は、ハッキリさせるどころか更にモヤモヤが残ってしまった。
つい、迅鵺の口からは溜息が零れる。
けれど、ふとキスの感触を思い出してしまった迅鵺は、顔を火照らせた。
「─────っ、そういえば、感触までリアルだったな・・」
自分で言って更に顔を火照らせ、そんな自分が恥ずかしくなった迅鵺は、慌ててベッドから下りると洗面所で顔を洗う。
冷たい水で、バシャバシャと顔を洗って顔を上げると水で滴った顔が鏡に映り込んだ。
「────悠叶さん、冷たかったな・・なんか・・・」
“悠叶さんが居なくなるような気がした”
迅鵺は、口には出さずにその言葉を呑み込んだ。口にしたら、本当にそうなりそうな気がしたから。
やっぱり、俺は悠叶さんに会いたいのか?
そう思ったけれど、響弥の事が頭に浮かんで、迅鵺はもう一度水で顔を洗った。
“慌てて答えを出すな”
迅鵺だって無駄に死にたい訳でない。迅鵺は、そう自分に言い聞かせた。
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