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第十章
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「明日から年末年始で来年の五日まで休業。六日から丸一週間、正月イベントやるから詳細は後日知らせる。」
二十七日、今日の営業前のミーティングで代表からの報告に連休だと喜ぶホスト達。けれど、次の代表の言葉でそのテンションも一気に下がる。
「三十、三十一は店の大掃除をするから、全員強制参加だ。」
“え~~~”等と、明らかに不満の声が上がるが、代表の言葉には力がある。
「今年最後の営業、気を引き締めていけっ。」
“今年最後”という言葉に反応した全ホストは、各々で気合いを入れた。
今年最後と聞いたお客達も続々と来店する。
イベントの時以上の盛り上がりをみせる、Club TOP SECRET。
迅鵺も、いつも以上にお客を呼び、今年最後のラストスパートをかける。次々とシャンパンコールが入り、今夜の目玉であるシャンパンタワーも用意されている。
迅鵺のバースデーイベントの時にもシャンパンタワーで注目された、あのお客だ。
そしてこの日、今年最後に相応しい盛り上がりと売上を上げる事となった。
「恭子さん、いつもありがとう。お陰で、今年一杯NO.1張ることが出来ました。来年もまた、宜しくお願いしますっ」
悠叶の中でも一番の太客、恭子に深々と頭を下げる迅鵺。
「迅鵺くん、そんな風にあなたは頭を下げないで?私が好きでやってることなんだから。その代わり、来年も素敵な迅鵺くんが見れることを楽しみにしてるわね。」
恭子は、控え目な品のある物腰で言うと、ニッコリと笑って帰っていった。
迅鵺は、恭子の後ろ姿を見ながら考えていた。
“これが本来の俺だ”
なのに、素直にそう思えないのは何故なのだろう・・・
迅鵺はあのクリスマス以来、怪我をしている悠叶が気になりながらも、たったの二日間ではあるが会ってはいなかった。
「─────はあっ・・」
翌日、連休初日。
迅鵺は、お昼過ぎに目が覚めて昼ごはんも食べずに、ベッドでゴロゴロしながらスマホ画面とにらめっこしていた。
「悠叶さん大丈夫かな・・」
怪我をしている悠叶の事が気になるのに、また悠叶に触れられるかもしれないと思うと行動出来ずにいる。
悠叶からは、毎日LINEが送られてきていて、内容は迅鵺を気遣うものばかり。
“迅鵺さん、ゆっくり眠れましたか?”
“いつも体張って頑張ってるから、年末年始くらい休めるといいんですけど・・・”
“ちゃんと、ごはん食べてますか?迅鵺さん料理しないから・・・”
この通りどれもこれも、迅鵺の事ばかりだ。
「──────はあっ・・」
迅鵺は、起きてから何度目かも分からない溜め息を吐き、スマホを持ったまま右腕を瞼の上に乗せる。
何もやる事がない休日。
迅鵺の頭には悠叶の事ばかりが浮かんできて、何度考えても“男に抱かれる自分”というものを受け入れる覚悟が出来ない・・・
悠叶の気持ちに応えるという事はそういう事だ。
受け入れると決めてしまったら、もう後戻りは出来ないし、何より自分そのものが塗り替えられてしまうような恐怖があった。
悠叶の気持ちを、はっきり知ってしまった上に孤独にはさせないと言ってしまった以上、中途半端になんて出来ない。
迅鵺は、元々根が真面目で仕事も中途半端になんてした事がなかった。だからこそ、今の地位があるのだろう。
結局、この日は同じ事をぐるぐると考えてばかりで、悠叶に返事をする事が出来なかった。
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